日暮里が「このみ」です

 JR山手線で特に僕の「このみ」なのが、日暮里駅だ。

 まるでジェットコースターのように見上げるほどの高架になっているこの駅は、街のすべてが見渡せる。駅前バスロータリーからあちこちに伸びる商店街は、どれもほっと一息つける優しい顔をしている。思わずニッポリ、いやニッコリしてしまう。特に東に伸びる日暮里駄菓子玩具問屋街は、まるで時計が昭和30年代で止まったかのよう。仕舞屋(しもうたや)ふうのおんぼろな駄菓子問屋9軒が密集し、舌が真っ赤っ赤になりそうな駄菓子や駄玩具がカラフルに並ぶさまは、レトロテーマパークとして入場料を取ってもいいほど、完璧。なんとも夕陽が似合う街なのだ。exciteニュースによると、駅前再開発により9月でこの光景はなくなってしまうのだとか。残念! お題場などが大金をかけて昭和の街並みを再現しているというのに、なぜ再現不可能な天然の街をつぶしてしまうのか。アホー!

 日暮里駅のもうひとつの魅力が、スナック。パブでもなく、バーでもなく、ましてキャバクラでもない。カウンター越しに決して若くはないママと話をし、こういう店でしか見たことがないツナピコ(ツナをキューブ状に固めたもの)なんか食べ食べ、カラオケを歌うたびにお店の人に小銭を渡す。そんな「死語の世界」が、まだ日暮里には数多く残っている。

 そんなスナック街で見つけたお店がコレだ!

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 なんてストレートなネーミング。こう言われたら、男なら入らないテはないよな。それとも、間下このみの店だったりして(←古ッ)。オチもレトロということで、どうかひとつ。

# by yoshimuratomoki | 2004-07-30 17:34

東京駅のポテトちゃん


 東京でもっとも有名な駅でありながら、周辺を散策する人が極端に少ない駅、それが「東京駅」だ。日本最大のターミナル駅であり、用事のすべてが駅のなかと地下街で事足りてしまう。待ち合わせスポットすら、駅のなかにあるのだ(東京駅の“前”で待ち合わせした人って、ほッとんどいないと思う)。そして誰もが駅から一歩も出ぬまま、弁当とお茶を抱えて新幹線に滑り込んでゆく。それゆえ、駅前の光景を知る人は、とても少ない。

 かわいそうじゃないか! あんなに有名なのに、駅前の光景を誰も知らないなんて。まるで、あんなに有名なのに実態がいまだにわからないZARDみたいなもんじゃないか。負けないで東京駅! そんな揺れる想いを胸に、僕は東京駅を降りた。

 丸の内口は、かつては「三菱帝国」と呼ばれた堅いビジネス街だった。ところが2年前にできたファッション&レストランビル「新・丸ビル」のおかげか、仲通りはオシャレな女性でいっぱい。オープンカフェでスーツ姿の女性たちがパソコンを打つ姿は、「デキル女!」って感じで、とてもセクシー。

 神田エリアは湯島聖堂や神田明神などの情趣が香る、静かでほっとする街だ。言うなれば「ハイソ下町」?

 で、問題は八重洲口だ。はとバスの乗車入り口があるこの駅前は、「ほんとにここが東京駅?」と思うほど、イナタイ。オフィスビルにはさまれたところにフツーの商店街はあるし、ちょっとアヤシイ大人のお店が集まる一画もある。なんとも、のんびりとしたムードの街がそこにあるのだ。意外でしょう?

 なかでも特にイイ湯加減のお店が、ポテト料理『ジジ&ババ』。ポテトオムレツなどがいただける、やさしい味の洋食店。おじいちゃんとおばあちゃんが、じゃがいもを茹でたりつぶしたり、いいよなぁ。「昭和の洋食」って感じで。
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 ……と、思いきや。あれ? ジジとババ、逆じゃない? それとも男装と女装マニアの店なのか? 大人の世界って、複雑だなぁ。ハーフポテトなオレたちには、まだまだ知らない世界があるようです。東京駅前は、人間模様もターミナル。

# by yoshimuratomoki | 2004-07-27 09:36

けんかをやめないで

 西武池袋線「石神井公園駅」。文字通り、石神井公園の最寄り駅である。

 スワンボートがゆうらり周遊する石神井池、釣り堀、スポーツグラウンド、いくつもの神社、野鳥が観察できる森林などなど、一日ではまわりきれないほど品揃え豊富かつ広範囲に渡るこの公園は、練馬区民のみならず、東京都民のオアシス。凶暴な暑さをしのぐべく、涼を求めて訪れる人で、いつもいっぱいだ。

 しかーし! 石神井公園のそばに、「ウラ名所」とも言うべき、もうひとつの公園があるのをご存知ですか? その名もズバリ「けんか広場」!
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 176坪と、けっこうな広さながら、園内は縦横にフェンスで仕切られている。まるで「けんか用特設リング」。また、遊具は鉄棒しかなく、あとはただひたすら原っぱが拡がるのみ。喧嘩の際にジャングルジムやすべり台で頭を打つ心配もなし。ベンチが備えつけられているので、例えば恋のライバルどうしの喧嘩なら、彼女はギャラリーとしてヤキモキしながら観戦できるようになっている(かどうかは知らんけど)。看板にはご丁寧に住所が書かれているので、果たし状もマップ付きで出せる(かどうか知らんよ)。

 そもそもこの「けんか広場」は、地主の厚意により敷設されたもの。ワンパクな子供たちが安全に喧嘩できるよう、軟らかい土と芝生が敷かれた、実に良心的なバトルフィールドなのだ。地主がお亡くなりになり存続が危ぶまれたが、練馬区が買収し、この名のまま残ることになった。練馬区ナイス! こんな公園が渋谷や池袋にもあればよかったのになぁ。そうすればナイフを持ち歩くギャングなんていなかっただろうに。

 この公園には、掟がある。「犬などをつれて入らないこと」。なるほど、喧嘩は犬も喰わないってことか。

# by yoshimuratomoki | 2004-07-23 16:25

飛び上がるほどオイシイ駅前商店街

 関東の駅名は、面白い。駅名がそのまま関東の近代史を物語っている。

 たとえば東急東横線学芸大学駅。この駅に同名の大学は、いまはない。駅名だけが遺跡として残っているのだ。また、かつては海鮮料理店の建ち並ぶ花柳街だった京急本線大森海岸駅も、いまでは埋立地が拡がり、決して海岸沿いの駅ではない。

 駅ではないが、目黒には「元競馬場前」というバス停がある。これなど昭和8年に府中に移築されているから、「いつまで“元”呼ばわりなんだ!」という気がしなくもない。まるでいまだに工藤静香を「元おニャン子クラブの」と紹介しているような。それだけ地元の人々の思い入れが強いのだろう。駅やバス停は、場所だけでなく、時間をもバック・トゥ・ザさせてくれるのである。休日に、こうした“関東ルインズ”駅を訪れるのも、なかなか味のある過ごし方ではないだろうか。

 最近、「関東遺跡駅」に仲間入りしたのが小田急小田原線向ケ丘遊園駅。2002年の3月に、75年の歴史の幕を閉じた向ケ丘遊園。東京、神奈川の人々の心の拠り所だったこの愛らしい遊園地は、いまは駅名にのみその在りし日が刻まれている。

 往時は遊園地へ出かける家族連れやカップルで賑ったであろうこの駅も、いまではちょっぴりメランコリック。商店街が広範囲に渡るだけに、哀愁をより一層きわだたせている。

 しかし、住民の「アトラクション魂」は決して火が消えてはいなかったッ! 「飛び上がるほどおいしい豚肉売ってます」。ジャンピング・ポーク・フラッシュ! たとえどんなに美味な豚肉をいただこうと、まず飛び上がりゃしないと思うんだが、向ケ丘遊園ソウルは住民の言語感覚のなかに、いまも脈々と息づいているのだ。
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 そういえば、先日とあるカツ丼のチェーン店に行ったおり、一挙に150円も値上げしているのには、さすがに飛び上がるほど驚いた。BSE騒動で豚肉の需要が一気にあがり、原価が飛び上がっているのだろう。味は、残念ながら飛び上がるほどにはうまくもなかったが。

# by yoshimuratomoki | 2004-07-19 20:07

こんにちは。

 ライターの吉村智樹です。僕は街歩きが大好きで、部屋でじっとしているのが苦痛。「引きこもり」ならぬ「出こもり」人間です。特に駅前商店街を歩くのが好きで、商店街からパワーをもらう「商店街浴」が僕の健康法。このブログでは、そんな商店街ちんたらWalkerな僕が毎回、街で見つけたイイ湯加減の物件を紹介してまいります。BGMはエアロスミスの『ウオーク・ディス・ウエイ』。

# by yoshimuratomoki | 2004-07-19 20:04