2005年 10月 25日 ( 1 )

ストップ・メイキングセンス

 前回に引き続く、大阪ネタを紹介しています。

 今回のネタは、大阪府民なら知らぬ者なしの超有名店(ヘンな看板で、という意味で)。大阪市営地下鉄堺筋線・谷町線『南森町』駅で降り、曽根崎方向に歩けば必ず見つかるシューズショップ。「そんなまどろっこしい説明ええわ! 西天満交差点のアレやろ?」とパブロフの犬モードでお答になる方も多いだろう。

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 交差点を渡っていると、いやでも目に入ってくる『もうあかん やめます!』と書かれた垂れ幕。U2も裸足で(いや靴履いて)逃げ出す魂の叫び。通天閣や道頓堀のチェーンソー型観覧車と並び、大阪を代表するワンダースケープと呼んで過言ではな……やっぱり過言?

 読者のなかには「こんな昔っからある有名なシャウト垂れ幕、なんでいまさら取り上げるん?」と訝しく思われる方もおられるかも。実は私、この店を先ごろテレビ朝日『スーパーJチャンネル』で取材して参りました *放送日は10月28日(金)です。

 この店が「閉店セール」を始めたのは、遡ること20年以上前。もちろんそれは「いちびり」精神にのっとったもの。客から「いっこも閉店せえへんやんけ!」と因縁をつけられても、店主はキッパリ「毎晩、閉店してるがな」と言い返していたそうだ。うまい! 毅然と、いちびりを貫く。これが大阪あきんど・オブ・ソウル。

 ところがバブルが崩壊し、靴の売り上げが落ちはじめた。「もうあかん やめます!」の垂れ幕は、7年前に掲げられた。「これまではしゃれやったけど、今度はほんまなんです」という意思表示だったのだ。

 あれから、未だ閉店していない。二重いちびり状態。その理由を訊き、僕は胸の奥を掻き毟られた。

「やめたら……さびしいやろ?」

 確かに、さびしい。西天満の交差点からこのシンボルが消えたら、大阪が大阪でなくなってしまうような気が。実際、大阪に帰るたびに、僕はさびしい想いでいっぱいになる。大阪球場、南街会館、いつもお茶を飲んでいた純喫茶の数々、いつまでもあると信じて疑わなかったものが、なくなっていく……。

 この店は、イチビる心を貫く信念のもと、いまも不景気と闘っていたのである。いやマジで、この店が本当にやめた時、それは正真正銘の大阪の危機ではないだろうか(吉村智樹)。

吉村智樹が無責任編集 おしゃべりWEBマガジン『日刊 耳カキ』。
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by yoshimuratomoki | 2005-10-25 02:33