川の流れのように

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 僕が越してきた寝屋川市は、片栗粉で溶いたような街だ。時間がとろ~んと流れている。そして「あんかけ」に目がない僕は、とろみ時間が流れるこの街にすっかり満足しきっている。

 ズバリ直言して、この街は田舎だ。されど入り用なものは駅前にたいてい揃っており、適度に便利。これまで新宿までわずか4駅という「過剰に便利」な街で暮らしていたため当初は戸惑ったが、“徒歩圏内には見事になんもないけれど、自転車さえあれば困らない”生活が、だんだん気にいってきた。

 そして寝屋川の美質は、さまざまなものがイイ湯加減に旧びているところ。例えば、この商店街。

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 「トップ」と名乗りながら、屋根のトタンが錆びきっている。トップどころか最後端。照明のルクスもおそろしく暗く、胸の深いところをくすぐってくる。

 トップ商店街のなかにあるこの店の色褪せ具合も、惚れ惚れするほど、お見事。

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 これ自体がアンティークTOYのおもむき。ある意味、おしゃれ(ある意味でだが)。時間がゆっくり流れているというより、時間がゆっくりズレてアナザーワールドと化している。でなければ、この黄色い象がダンボなわけがない。もし「寝屋川ディズニーランド」ができたら、きっとこの黄色い象が空を飛んでいるのだろう。耳が小さいから落下するかも。

 駅前にはたいていの業種が揃っているが、同じ業種の店は少ない。一村一品運動ならぬ、一駅前一業種運動でもあったかのよう。喫茶店ならココ、美容室ならココ、といったふうにライバル店が少ないため過当競争がなく、看板も多くは語らない。この喫茶店など、胸をすくほど潔い。

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 そう、店名が書かれていないのである。店名はきっとあるのだろうが、わざわざ書かずとも「喫茶店といえばココ」。町内でそう認識されているので、なんら問題がないのだ。
 しかし「一品」って、いったいなんだろう。喫茶店のメニューって、基本的にどれも一品じゃないのかな

 このように看板が黙して多くを語らず、総じて即物的。ヘンに店名に凝ったりしない。飲食店なら「お腹がすいたら迷わずココ」と遠目にもわかるよう、食べ物屋でしかありえない店名になっている。例えば、

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 ポコポコ、パコパコ、ピコピコではいけない。お腹が空いたら「ペコペコ」しかありえないのだ寝屋川では。

 美容室も、これまた同じ。こねくりまわしたオサレな店名など、つける必要がない。それより「あ、パーマ屋だ!」とわかる名前にするほうが大事。ひねるなら、

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 これくらいで充分なのである。

 このように、街全体が家庭的。ベッドタウンとはよく言ったもので、確かに街全体が寝室のよう。よく雑誌で「隠れ家的なお店」と書かれた記事を目にするが、もともと市全体が隠れ家ムードのリラクゼーション感に包まれているため、わざわざ隠す必要がない。むしろ「隠れ家的なお店」を打ち出すためには、隠れ家感を大々的に宣伝をしなければならないパラドックスが生じる。例えば、このように、

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 ここまでおおっぴらにデカデカと「シークレット、ですYO!」と言わなきゃ、誰もこの店がシークレットゾーンだと気がつかないのである(吉村智樹

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by yoshimuratomoki | 2006-11-29 22:05