オコノミック・アニマル

 お好み焼きというものは、なかなかヤヤコシイ食べ物だ。溶いた小麦粉を鉄板に流し、野菜や肉を敷いて丸く焼く。ただそれだけのいたってシンプルな料理のはずなのに、言わば「B級グルメ」であるハズなのに、焼く側はもちろん、食べる側にもけっこうな技術が要求される

 なぜならば、お好み焼きは「箸で食べると、ちっともうまくない」から。お好み焼きは箸で食べるようにはできていない奇特な食べ物。箸でちまちまとおちょぼ口で食べていると、せっかくほどよく溶けた肉の脂(これこそお好み焼の醍醐味)が冷め、口あたりがどんどん重くなってゆく。

 そもそも箸以前に、小皿に取り分ける行為そのものが「マナー違反」。熱い状態のものを、少しでも冷ましてはならない。熱された鉄板の上でダイレクトカッティングし、間髪入れずそのまま口に運ぶのが紳士淑女の正しい習わしである。

 だからといって、ナイフで切ってフォークでそそと、なんてスノッブで馬鹿げたことはしない。お好み焼きを切り分けて口に運ぶための専用のツールを用いる。それが「大ゴテ&小ゴテ」だ。

 お好み焼を食べるために、「コテ」と呼ばれる大小の金属ヘラ2種を用いることは、皆さんご存知だろう。まず完成した円盤を大ゴテでジャストなサイズに裁断する。次に切り分けられたピースを小ゴテですくい取り、そのまま口元へ運ぶ。

 もちろんスプーンのように口にそのまま入れるわけではない。約45度の傾斜角度を保ちつつ、ピースを口中に少しずつ滑り込ませる。つまり小ゴテは「すべり台」の役目を果たすのだ。そうすると、ほぼ鉄板で焼けた状態の温度のまま、お好み焼きの真髄が味わえる。口中に運ぶ際は微妙に小ゴテを振動させ、ジグザグに滑らせてゆくとスムースインしやすい。シュプールを描く要領で。

 そして唇から舌へのトスを決める。そのおりは「アッツッアッツッアッツッアッツッ」と高石太の往年のギャグのような嗚咽をこぼしつ、ただれた舌をビールやサワー(チューハイ)、ラムネなどでいったんクールダウンさせるのが礼儀である。この一連の動きを流麗かつファッショナブルにキメられれば、どんなVIP揃いの晩餐会だって怖くはない

 そう、お好み焼きを箸で食べることは禁忌であり、実はフランス料理に近しいTPOが存在するのだ。もし「なぜ私はモテないのかしら。なぜ彼氏ができないのかしら」と悩んでいる女性がいたら、それはきっとお好み焼きを美しく食べていないからに違いない。

 「そんな~、アタシ猫舌だから、熱いままのなんか食べらんな~い」という方もおられるだろう。個人的には「お好み焼きは猫舌の人が無理に食べるものではない」とも思うのだが、たとえば阪急箕面線「桜井」駅前で見つけたこの店などで、

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 やさしくレクチャーを受けつつ初歩から段階を踏めば、貴女もいつかきっと素敵なお好み焼きセレブになれるだろう(吉村智樹)。


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by yoshimuratomoki | 2006-10-21 23:28