乙女パスタに感動

 自分は「スパゲティをパスタと呼ばない運動」を推進している。知らない方も多いだろう。なんせ5分前に推進したので。

 いや、確かにスパゲティ=パスタなのだ。間違ってない。しかし、パスタ=スパゲティではない

 例えば動物園に行って、子供が猿の檻の前で「パパ! 動物だよ! 動物がいるよ!」ってはしゃいでたら、やっぱおかしいでしょう? 確かに猿は動物だ。けれど、猿にしてみたら「ワイは猿や! プロゴルファーやないけど」と言いたくもなるでしょう。

 スパゲティとは正確には「直径2mm前後の乾燥パスタ」を指し、1.5mm前後だとスパゲテーニ、1mm前後だとフェデリーニ、平たく伸ばせばリングィーネ、麺に玉子を加えればフェットチーネといったように細さや形状、材料に応じて名前が変わる。実に細かい細かいカテゴリーがある。だからスパゲティを「パスタ」と呼ぶのは、大マカすぎるのである(大きなマカロニに非ず)。

 いやいや、そんな堅い話をしてるのではない。もっとやわらかい、アルデンテな話なのだ。
 僕が言いたいのは「ミートソーススパゲティやナポリタンをパスタと呼ぶのはいかがなものか」ということ。

 スパゲティをパスタと呼ぶのは、「カジュアルで、ちょいとオサレにランチ」という気分からだと思う。ボンゴレロッソやペペロンチーノ、ペスカトーレなんかはパスタを名乗ってかまわない。なんかセレブだし(意味不明)。

 しかし腹にドカンとくる、鉄板のうえで真っ赤っ赤に焼けただれたアレやあいつは、パスタって雰囲気じゃないだろう。箸でも食えそうな「おふくろ感」がある。そもそもナポリタンは、ナポリにはないのだから。

 そんな麺どうくさいことを考えながら高円寺の商店街を歩いていたら、とある洋食屋にこんなメニューがあった。

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 『格好よくいうとパスタ

 格好よく言うと……。わざわざそう呼ぶということは、そうとうイナタいもんが登場しそうだ。で、さっそく注文しました。出てきたのは、

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 うまそお! 鉄板のうえに太めの麺とケチャップソースがねっちょり絡み、これぞまさしく日本人のスパゲティ。見た目は武骨でなにひとつ格好よくないけれど、腹が減ってるときは断然こっちがピアチェーレ。格好悪いスパゲティ、ボンジョルノ! 格好悪いということは、なんて格好いいんだろう(吉村智樹

吉村智樹が無責任編集 おしゃべりWEBマガジン『日刊 耳カキ』。
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by yoshimuratomoki | 2006-01-12 14:13