「ロボットの米屋さん……」
いま子供たちに「ロボットの絵を描いて」と言ったら、いったいどんなフォルムで描くのでしょう。
僕にとってロボットとは、こういう寸胴に手足がついたような、ずんぐりむっくりしたものでした。
先日、仕事で箕面市へ行きました。
箕面市へ行ったのは、10年どころではないほど久々。
それでも、街の印象がほとんど変わっていないのに驚き。
そしてもっと驚いたのが、彼が、まだそこにいたこと。
「ロボットの米屋さん」。
お米屋さんのショーウインドウ(?)に置かれ、ほぼ人通りがない車道へ向かってやさしい笑顔をたたえる彼が、まだそこにいました。
ロボットが米を搗き、精米してくれる……のならもっとおもしろいんですが、残念ながら稼働しておらず、そもそも米屋自体が営業していない様子。
そして、僕が以前に見たときから、すでに稼働してなかったんです。
あらかじめ失われたロボット……。
営業していない米屋さんの看板が、ずっとここに、なんのためにあるのか。
ロストワールドに迷い込んだ気分。
それにしても貴重です。
大阪は都市開発や区画整理や景観浄化の名のもと、味わい深い珍看板や珍風景をつぶすことに容赦がないので、写真で残しておかないとすぐなくなります。
風情のある商店街をつぶして、誰もいない「コミュニティ広場」をつくったり。
そしてみんな、元の風景を忘れてしまう。
テレビ局からよく「あの看板、どこにあるんですか」と問い合わせを受けますが、一応答えはするけれど、きっといまから行ってももうないでしょう。
現存率がきわめて低いんです。
永遠にあると思っていた西天満の「もうあかん、やめます」の靴屋さんも今年本当にやめてしまったので、このレトロフューチャーなデザインの「ロボットの米屋さん」が大阪珍風景界の最長寿物件かもしれません。
箕面という、地上げ屋が手を出さない景勝地だから起きた奇跡なのかも。
そしていまこのロボットに出会ったのは偶然ではない気がします。
ずっと同じ場所にいて、ずっと愚直に同じことを、それこそ毎日繰り返していて、自分は何も変わっていないのに勝手に「懐かしい」と言われて、それで彼のように笑顔でいられるか。
ロボットに問われているように思います。
by yoshimuratomoki | 2016-07-04 13:00 | 大阪府