ファイトクラブ

 先週、仕事で大阪に帰った。さすが期待を裏切らぬ大阪。変な写真が鬼ほど撮れたので、しばらくは大阪ネタを読者にお見舞いしていきたい

 さて、皆さんはすでに「いやげもの」という言葉をご存知のことと思う。これは、みうらじゅんさんが命名した「もらっても嬉しくない土産物」のこと。その多くはデッサンが狂っていたり、時代遅れであったり、過剰なデコレーションやゴールドメッキが施されていたり、使いみちがなかったり、などの理由で「いやげもの」に認定されている。しかしそのストレンジなチープさゆえ妙な可愛らしさがあり、意外にも最近では「いやげもの」を敢えて欲しがったり、蒐集する人も多く現れている。

 しかし、そんな「いやげものってキてるよね」的なイキッた風潮に背を向けるように、自ら「いやげもの」を志願するツワモノが大阪に現れた。それが、こいつだ!

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 カニが激怒しながら『しばくぞ』……。

 怒られた! ごめんとしか言えないわ!(by南海キャンディーズ山ちゃん) おれはチープシック&レトロ好きなので、いやげものは大好きなのだが、これは本当に欲しくない。というか、自ら「買うな!」というビーム、いな、蟹光線を放出している。

 これは大阪市営地下鉄堺筋線、阪堺電軌阪堺線『恵美須町』駅前で見つけたもの。恵美須町……。勘のええ読者なら脊髄反射でそのマーケットを言い当てるだろう。そう、これは通天閣の土産物売り場で見つけたタオル地のハンカチなのだ。さすがワイルド番地、土産物とておいそれとは手を出させぬ迫力がある。

 さて、ここに書かれている「しばくぞ」だが、これは当然の如く大阪弁である。標準語に訳すと……なんだ? 殴る、ではない。殴るには「どつく」というれっきとしたファイティングワードがある。蹴る、でもない。蹴るは大阪弁でも蹴るだ。子供の頃からヤンキーに「しばくぞワレ!」と脅され怯え続けてきたが、では「しばく」がどういう状態なのか皮膚感覚では理解してても、具体的には未だにわかってない。「さばく」を、もっとインケツにした状態だろうか?

 さらに「しばきあげる」という言葉もある。よくわからない状態でありながら、さらにあげられるのだ。「しばきまわす」という言葉もある。意味がわからないまま、まわされるのである。なんて恐ろしいんだ! 「しばきハンダヅケ」に至っては、もはや理解不能。サイケである。

 しかし、ひとつだけわかったことがある。それは大阪もんのカニは、背中に顔がついているということ。かに道楽の人もたいへんだ。こんな顔で睨まれたら、道楽できない。で、このハンカチ、なんぼ? よ、430円?! 高ッ! しばくぞワレ!(吉村智樹

by yoshimuratomoki | 2005-03-07 22:56