書体デザイナーの密かな楽しみは、買い物先や旅先で自分の書体に思いがけず出会うことです。ここでは自分の書体の使用例だけを集めました。ときどき付け足すつもりです。
書体の名前の最初についているのは、書体メーカーの名称あるいは略称です。
FF: エフ・エフ。フォントショップ (FontoShop International)のこと。
ITC: アイ・ティー・シー(International Typeface Corporation) 。
Adobe: アドビ・システムズ (Adobe Systems)。
FF Clifford(クリフォード)
カンヌ映画祭のグランプリ、
パルム・ドールのロゴに使われているのも Clifford です。
この書体は私が欧文書体設計家になるきっかけでした。1994 年からコツコツつくって改良を重ねて、97 年にほぼ完成して、しばらくは放っておいたんです。1997 年末にアメリカの大手書体メーカー ITC 社の書体コンペティションがあったのでそれに応募しました。自分を宣伝する良いチャンスだと思ったので。翌98年春に届いた結果は、本文部門で一位、コンペティション全部門でもグランプリというものでした。これはその時の雑誌『U&lc(アッパー・アンド・ロウアーケース)』での結果発表の記事。
使用例です。米国の雑誌『Reason』、アートディレクションはエリック・シュピーカーマン。彼も Clifford のファンです。
これはベルギーの美術学校でワークショップを開いたとき、そこのホテルで見つけた展覧会のパンフレット。残念ながら時間が無くて展覧会には行かれませんでした。
子供向けの本。古代ローマのことを解説しています。タイトルも本文もすべて Clifford で組んでありました。
これは 2009 年3月、香港の空港で見つけたペーパーバック『The Clique』。Clifford が使ってあったのはタイトルだけで、本文はなんか変な書体で組まれていて読みにくかった。
ITC Woodland(ウッドランド)
角の丸い、柔らかさを持ったサンセリフ体です。食品のパッケージに使われているのを見かけます。これは子供向けのヨーグルト。DUO の部分に使われてます。
これはかみさんがたまたま買ってきた子供向けシリアル。丸く組んであるところが Woodland です。
子供向けのスイスの文化や生活の紹介本。スイスで見つけた。タイトル「Schweiz(スイス)」の文字が Woodland 。
イケアという家具屋さんのなかのレストランで。飲み物のうち、子供が好きなリンゴジュースの炭酸割りのラベルが Woodland でした。
ITC Luna(ルナ)
一時期、Mac OS のシステムフォントとして搭載されていて、いろんなところで使われたようです。これはチョコレートのロゴに使われた Luna。フランスで見つけました。パッケージが違うのは、時期を変えて2回買っているためです。
2007年12月、中国の北京で書体コンテストに審査員として招かれて行ったとき、近くにあったショッピングモールで。
ITC Magnifico(マグニフィコ)
イギリスで見つけた CD。曲も「Riot Radio」がなかなかよかった。
FF Acanthus(アカンサス)
スイス、ベルン市の郊外にある Zentrum Paul Klee(パウル・クレー美術館)の売店で。 「Paul Klee」の部分が、Acanthus Open です。
2008 年のアドベントカレンダーに使われていました。
タイポグラフィ関係の書籍でおなじみの
Verlag Hermann Schmidt から。実はツァップさんの誕生日パーティでこれを持ってきた人がいたので、それで初めて分かって、うちでも買ったんです。普通は24の扉があって、クリスマスイブまで一日ひとつ扉を開けていくのを楽しみにするわけですが、これの場合は26まで。アルファベットの文字数と同じです。これはカレンダーの裏側。「アドベントカレンダーは子供向けのものばかりでいいのか?」みたいなことが書いてある。
Adobe Calcite(カルサイト)
2008年3月、イタリアのローマに行ったときに見つけました。フィウミチーノ空港での広告です。
2008年4月と8月、スイスのベルンで見つけた子供向けのワークショップのパンフレット。
ITC Silvermoon(シルバームーン)
2008年1月、ドイツのハンブルクの本屋で見つけた、『Fashion Slaves』(ファッション奴隷)というタイトルのペーパーバック。s のところにハンドバッグが引っかかってる。