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ツァップさん宅と活版印刷工房を訪問
ロンドンのホテルからの更新です。いま一週間の休暇をとっています。なのでごく簡単な報告です。

日本から嘉瑞工房の高岡重蔵先生・昌生さん親子とデザイナーの立野さんが遊びに来ていて、ドイツでの3日間はうちに泊まっていただいて、3月24日にいっしょにロンドンまで来ました。

ドイツでは、3月22日の日曜にヘルマン・ツァップさん宅を訪問しました。そこで3時間、どんなことを話したか、それはもう、このブログでは書ききれない。いずれまとめる機会をつくって、そこでちゃんと書きます。

翌23日には 映画『Helvetica』の冒頭のシーンで登場するマンフレット・シュルツさんの工房を見学。活字を一本一本拾って Helvetica と組んで印刷するあの人です。あの映画の冒頭のシーン、じつに良いですよね。

マンフレットと私はその映画が縁で友達になったんです。工房はいま資金難で、これまでやっていた定期的なワークショップを開いていないということですが、今回は特別に開けてくれました。これはマンフレットの工房で撮った写真です。これは8ポイントの Wilhelm Klingspor Gotisch の大文字の W 。後ろでほほえんでいるのがマンフレット。
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花形の活字。
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インキのローラー。
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こんなものを用意していてくれました。マンフレットが電話で「日本語では Domo arigato gozaimasu っていうんだろう?」ってしつこく聞いていたのはこのことだったのか! これはその場で刷ったものです。
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ロンドンでは、空港からホテルについて荷物を下ろして、まっしぐらにチャリングクロスの古書店街へ。良い収穫がありました。さて、きょうはこのあとロンドンのカリグラファたちといっしょに活字博物館に行く予定です。
# by type_director | 2009-03-25 08:23 | 金属活字 | Comments(0)
「の」の字
教科書を目指していないブログなのに、ここまでけっこうしっかり書いてしまいました。書きたいことがいろいろたまってたんです。この調子で続けるのかと思われてもちょっと困るので、ここらでサラリと流す感じの話題を一つ。

2週間前に行っていた中国の珠海と香港で気がついたこと。中国の雑誌やポスターの見出しに、ひらがなの「の」の字を使うのが流行っている。案内をしてくれた中国のデザイナーによれば、中国の人も「之」と同じ意味と解釈していて、わかるんだそうです。
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# by type_director | 2009-03-16 21:45 | Comments(2)
書体は特定の国の雰囲気を持ってるの? その3 Univers
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日本では、「Univers はオランダの書体」って噂もウェブサイトに載ってたりします。そんなナンセンスな話がどこから来たのか見当もつきませんが、これも間違いです。ヨーロッパでそんなこと言っている人はいません。

この書体のデザイナーはスイス生まれのアドリアン・フルティガーさんで、フランスの活字会社に招かれて、この書体を 1957年に発表しました。スイスでも、もちろん使われてますよ!

これはフルティガーさんと書体の制作をするためにスイスのベルンに行っていたときに見つけたもの。 bls というのはスイスで最大の私鉄です。
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bls の時刻表の表紙も Univers です。
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ベルン市の教育・スポーツ局の入り口。ガラスが局面になっていてちょっと分かりづらいかもしれませんが、間違いなく Univers です。
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ちなみに、チューリッヒの観光案内所でもらってきた何冊かのガイド地図のうち、2種類は Univers で組まれていました。
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これはチューリッヒの劇場のチラシ。ぜんぶ Univers です。
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スイスを離れてドイツへ。これはドイツのフランクフルト国際空港で使われている Univers です。あたりまえですが、スイスやドイツだけでなく世界中で使われています。
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# by type_director | 2009-03-16 05:45 | 書体が特定の国の雰囲気? | Comments(0)
書体は特定の国の雰囲気を持ってるの? その2 Helvetica
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2009年2月に大阪と東京で開かれた展覧会「ヘルベチカ・フォーエバー」のギャラリートークでもちょこっと話しましたが、「Helvetica はスイスの国家的書体」なんてことは決してありません。たしかにスイスでつくられ、「Helvetica」という名前も「スイスの」という意味なんですが、Garanond、Caslon、 Bodoni と同様に Helvetica も世界中で使われる書体です。

Lufthansaドイツ航空のハガキです。Helvetica で組んだだけのロゴを、こんなにも誇らしげにアップにする会社って他にある?
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Lufthansa は機内誌もチケットもすべて Helvetica。
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Air France の機内食メニュー。Helvetica の細いウェイトをこざっぱりとおしゃれな感じで使っていました。たしか3年くらい前のもの。
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少し前まで、ドイツ鉄道も Helvetica を全面的に使っていました。数年前からは特注書体に切り替えましたが、まだあちこちに残っていますよ。これは 2008 年末に撮ったドレスデンの駅。
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列車遅延の証明と運賃払い戻しについての説明書き。私のこれまでの経験では、この紙をもらえるチャンスは高い。うれしくないけど。
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ロンドンの新しい名物、大観覧車「ロンドン・アイ」のロゴも Helvetica の細いウェイトでした。施設は料金表に至るまで Helvetica。
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Helvetica の例のしめくくりはニューヨーク地下鉄の切符。
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逆に、スイス最大の国際空港、チューリッヒ空港は何の書体を使っていると思いますか? 
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Akzidenz Grotesk(アクツィデンツ・グロテスク)です。ドイツの活字会社 Berthold 社の19世紀からのロングセラーです。
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これで分かるとおり、「Helvetica はスイスの国家的書体」なんてことはないんです。
# by type_director | 2009-03-16 04:37 | 書体が特定の国の雰囲気? | Comments(0)
書体は特定の国の雰囲気を持ってるの? その1 Bodoni, Caslon など
いくつかまとめて、ちょっと長い話を書きます。日本のデザイナーの皆さんに、ぜひ最初に知っておいてほしいんです。

日本でよく聞かれる噂話ですが、「Bodoni(ボドニ)はイタリア、Caslon(カスロン)はイギリス、Helvetica(ヘルベチカ)はスイスで生まれた書体だからその国で使うもの」なんてことは決してありません。その辺のことをドイツ人の友達と話したら、結局「タイポグラフィはそんなに簡単じゃない!(笑)」というところに落ち着きました。イタリアの人がつくった書体はイタリアのイメージのはずだ、と考えるのは単純すぎるんです。

私はワインに詳しくありませんが、詳しい人になると「イタリア料理にはイタリアのワインが合う」なんて大ざっぱなことは言わないでしょう? 料理が肉だろうが魚だろうが、イタリアのワインだったら赤でも白でも、辛口でもなんでもいいなんて。

だから、書体を選ぶ際に産地じゃなくてその書体の性格で選ぶのは全然問題ないんです。「かわいい」とか「なんとなくおしゃれ」「力強い」という感じで、形からくるイメージでいいじゃないですか。少なくとも大間違いではない。ちょっと例を見てみましょう。

イタリアのファッション雑誌。使われているのは Bodoni ではなく、 H&FJ Didot(ディド)。つまり、フランス人ディドがつくった 1800 年前後の活字を元に、アメリカのデザイナーが現代的な感覚でデジタル化したものです。
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イタリア人ボドニがつくった、やはり 1800 年前後の活字に忠実にデジタル化した ITC Bodoni を使って優雅さを出しているドイツのファッション雑誌。
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イギリス人のカスロンが 18 世紀につくった活字をベースにした Caslon を使って、ちょっとクセのあるエレガンスを表現したフランスのファッション雑誌。
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# by type_director | 2009-03-16 03:52 | 書体が特定の国の雰囲気? | Comments(0)