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TypeCon レタリング観察ツアー 1日目
アメリカのアトランタで開かれた TypeCon のなかの、レタリング観察ツアーに2日間連続で参加してきました。1日目は7月17日、アトランタはドイツより6時間遅くて、ちょうど時差ぼけとタイミングがあって朝7時15分集合でも全然問題なかった。何でこんなに早いのかというと、日中の猛暑を避けるため。実際この日の午後は、ほぼ日本の真夏状態で気温(体感)33度、湿度が高かったから正解でしょう。あと、10時半にホテルに戻って解散なので、せっかくの盛りだくさんのコンファレンスの講義を聴きたい人にも好都合な時間設定です。

この日は約15人が参加、ホテルのロビーで集合してからポール・ショーさんの案内で電車に乗って街の中心部まで行き、あれこれ見て歩きました。真ん中の、赤いシャツでバッグを二つたすき掛けにしている人がショーさん。
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やっぱり15人がぞろぞろと歩いて、街の看板を見あげてガヤガヤ言いながら写真を撮っているというのは、一般の人から見てかなりヘンなんでしょうね。
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このビルの文字を見ながら「このMってなんか狭くない?(参加者)」「Eの横棒の位置が上すぎで短いんじゃない?(別の参加者)」「これは19世紀のアール・ヌーボーの影響でそうなっているんだ。今見るとヘンだけど、当時はそういうバランスが普通だったんだね(ショー)」なんて話している途中、このオフィスにいる人が、上の窓のブラインドの隙間からこっちを見て携帯電話で「ヘンな集団」の写真を撮ってた。
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ただのマンホールに群がって写真を撮りまくる15人...
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GAP Co の G が良い味出してます。
別のマンホールに夢中になっているうちに私と他の数人は取り残され気味になる。
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そのなかにうちの社長もいましたよ。

この改装中のナイトクラブで追いつく。
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ホテルに戻るために電車に乗ります。「こういった公共交通機関のサインで Times Roman はちょっと珍しいねー」「サンセリフ体が普通だよね−」なんて話しながら。
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# by type_director | 2009-07-22 14:35 | 講演やコンファレンスの記録 | Comments(1)
小冊子プレゼントのお知らせ
アメリカのアトランタで開かれた TypeCon からきのう戻りました。

6月にこのブログで紹介した小冊子『Mr. Typo and the Lost Letters』のプレゼントのお知らせです。
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ライノタイプの日本代理店エス・ディ・ジーから連絡があって、ライノタイプ新製品ご購入の方とメールマガジン愛読者10名様に(こちらは抽選)プレゼントだそうです! 数に限りがあるのでお早めに。7月21日の時点で、メールマガジン愛読者からの応募はすでに30人だそうです。

プレゼントについての問い合わせ先やメールマガジン登録申込みは エス・ディ・ジーのウェブサイト をご覧ください。
# by type_director | 2009-07-22 13:55 | Comments(0)
出張のお知らせ
明日7月16日から、毎年夏に北米大陸で開かれる書体デザインのコンファレンス、 TypeCon に参加のため出張します。新しい記事を書いたりコメントにお答えしたりできるのは7月22日以降になります。ご了承ください。

コンファレンスでは、私はマシュー・カーターさんらといっしょに「書体審査」という枠を受け持っていて、書体デザインを持ち寄った人にアドバイスをします。また新しい書体の発表もすることになっています。

コンファレンスのようすは、帰ってきたら載せます。お楽しみに。
# by type_director | 2009-07-15 07:39 | Comments(0)
合字(4)
T-h 合字について、読者の o_tamon さんからの以下の質問にお答えします。
「『Th』のような普通に組むとその部分だけ字間が広がって見えてしまうのを解消する機能もあると聞いたのですが本当でしょうか?」

例は Adobe Garamond Regular です。この図の、上は合字でない Th 、下は T-h 合字です。
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OpenType 機能の「合字」を選んでおくと、f-i の組み合わせでは自動的に fi 合字になるのと同じように、T-h の組み合わせは合字になります。

これについて、実は2008年に Adobe Garamond Regular のデザイナー、ロバート・スリンバックさんにインタビューしていたんですよ。『欧文書体2』後半の記事にするためのインタビューだったんですが、インタビューの量が多かったのと内容が濃すぎたためボツにした部分です。スリンバックさんの回答のうち半分以上は削ったかな。他のインタビューも同様です。

T-h 合字について、彼は「賛否両論あった」けれども、「来たるべき時代の標準になるだろう」と言っています。たしかにアキの部分を見ればよくなったように見えますが、問題は慣れですね。今のところ、Adobe の書体以外でこの合字が入っているのは少ないと思います。

ただ、デジタル以前にもT-h 合字の試みはいくつかあって、スリンバックさんも「自分の発明ではない」とハッキリ言っています。私の知っているところで有名な書体は、ヘルマン・ツァップさんの Palatino Italic(金属活字、1948年)があります。これは当時その書体を鋳込んでいたステンペル社の見本帳で、ツァップさんからもらったものです。

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ツァップさんと私とでつくったデジタル書体 Palatino nova には、T-h 合字は入れていません。
# by type_director | 2009-07-14 03:46 | Comments(4)
「似た」フォントって(2)
デザインはほとんど盗用であっても、フォントの名前を変えればいちおう法的にはひっかからない、という例のもっとそっくりなのが、有名な Palatino(パラティノ。1948年ヘルマン・ツァップ作)のクローン Book Antiqua(ブック・アンティーカ)です。書体デザインに詳しい人は、Helvetica と Arial との違いを見分けられると思いますが、こうなると私も見分けられない...
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1993 年にツァップさんが ATypI (国際タイポグラフィ協会)を脱退したのは、その年のコンファレンス会場で「フォントの保護」をうたった講演をしているにもかかわらず、 大手ソフトウェア会社が会場で Book Antiqua の入ったフォントデータのディスクを無償配布する、ということをしたからです。この話をしてくれた私の友人も含め、良識ある参加者はそれに抗議してすぐにディスクを突っ返しています。

その大手ソフトウェア会社は、それ以前に Arial を自社のOSに搭載していたので、「またか」ってことでデザイナーのフォーラムなどで叩かれてさらに世論の反発を買いました。いよいよ風当たりが強くなって、ようやくライノタイプ社に正式に Palatino のライセンスを申し出たのが Palatino Linotype です。これは、原図はライノタイプが提供してデジタル化はモノタイプ社で行っています。しかし、その後も Book Antiqua は搭載・販売され続けていて、ツァップ氏は怒っています。

ツァップさんが書いた記事「書体デザインに未来はあるか」(注)の中からごく一部を要約します。
「大手ソフトウェア会社が“Book Antiqua”と称して Palatino の低級なコピーを搭載しているが、私には何も知らされておらず、デザインの修整もできないし、当然1セントのロイヤリティも支払われない。大会社ならば、自ら最高の Palatino を開発して使うべきではないのか。書体制作には数年間かかるが、それをコピーする側は何の手間もかけていない。何も知らないユーザーは、その会社が書体の開発費を正当に払っているものと思いこむのではないか。」
(注):TIA (Typographers International Association) の会報、1994 年 2 月号に掲載された。

結局、大手ソフトウェア会社は、書体 Frutiger (1976年アドリアン・フルティガー作)にそっくりな Segoe(シーゴー*)という書体を委託して開発し、自社のOSに搭載しています。これに対してもライノタイプは大手ソフトウェア会社に抗議をして、ライノタイプと無縁の多くのデザイナーも反対運動をしましたが、Segoe はいまも使われています。

ライノタイプ社の前の社長は、Segoe の件で打ち合わせの時に、私にこう言ったことがあります。「抗議とか訴訟とかに時間とお金を使うより、その費用をフォント開発に回して、どんどん新しいフォントをつくり出すメーカーだというプラスのイメージを持ってもらった方が近道ではないか。」 良質な新しいフォントを開発し続けることでユーザーの信頼を勝ち取り、書体メーカーに利益を還元したくなるような雰囲気をつくろうという姿勢です。これには私も賛成です。ただ、時間のかかることだとは思います。

* この発音については、読者の方から助言をいただいて米国式の発音に近い表記に書き換えました。最初は「セゴエ」とドイツ語式で書いていました。ななしさん、ご助言有り難うございます。
# by type_director | 2009-07-10 06:33 | Comments(4)