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「100年」という単位のことを考えたのが先週、そして今度は「10年」を考えてみます。
本文にも使われるような書体は、あちこちで頻繁に見かけるようになるまでには10年かかる、と思います。
スーパーマーケットに行ったら、2017 年の このブログ で書いた、牛乳に混ぜて甘い飲み物にするための粉末「Kaba」のロゴが、私のつくった書体 Akko Rounded になっていました。Akko の発売は 2011 年。ちょうど10年です。
2017 年のときのパッケージがこれ(下)。
このほかにも、去年見た例では、住んでいる町の旧市街で昔は帽子屋だった小さな個人店が新しくアクセサリーなどのお店に変わっていたので近づいてみたら、そのチラシに使われていたのが Akko だったことも。
そして、昨年8月のブログ で書いたとおり、ドイツの南部の Covid-19 の検査場の案内が Akko で組まれていました。
そして、Akko より少し前に私が設計して 2009 年に発売された DIN Next Rounded のほうも、ドイツ鉄道が昨年新しく導入した車輛の番号や数字部分などに使われています。長男が撮影してくれました。
いつからか知らないけど、テレビ番組のテロップにも使われていました、、ヘッセン地方のニュースです。
Akko や DIN Next Rounded は、本文にも使われることを想定して設計しました。
どちらも、最先端の流行を取り入れた見出し書体と違って、すぐにパッと火がつかないぶん、長く使われるはずです。
私の恩師、髙岡重蔵 氏が生まれたのが 1921年 1月18日だったので、ご存命だったらきょうでちょうど100歳。
100年というのは、長いのか短いのか。
20年前、私がドイツの Linotype 社からメールをもらい、ドイツでタイプディレクターとして仕事をしないかと持ちかけられ、ドイツ語も話せないのにどうしよう、など不安でいっぱいのときに重蔵氏に相談したら、軽く「あ、行けばいいよ」と言っていただいたのが決心につながりました。
『髙岡重蔵 活版習作集』をじっくり眺めます。どのページを見ても、欧州の印刷物の香りがする。しかもとびきり上等の。
思えば、重蔵氏には、日本も西洋も、国境も言葉の壁も、何にもなかったのかもしれない。そんなことを考えました。
一つ前の記事「自然が描く形」の下田さんとのやりとりのきっかけになったのは、田中さんという方からのコメントでした。グラフィックデザイナーでも書体デザイナーでもなく、ハンガリー刺繍のビデオをあげている方なのです。ビデオは こちら。
なんだか私の本『欧文書体のつくり方』が参考になったそうで、その田中さんの許可を得て、いただいたコメントを引用します。
「錯視のことと、克服の仕方、文字が複数連なったときの見え方、互いのバランスをここまで理路整然と述べた本は稀かと思います。」
錯視以外の部分でも、アルファベットの O は一筆書きのように見える形でも二回に分けて書いている、という点と、まるで一本の連続した線でできているように見える唐草模様を、糸が生地の間を出たり入ったりしながら何本もの短い線でしかもごく自然に見えるようにつないでいく刺繍の運針の方法とのあいだに共通点があるようです。カリグラフィーも刺繍も、材料の性質や道具を持つ方向などなどからくる制約を知って、無理の生じそうな部分を避けながら自然に見せているところが共通するんだと思います。
私は、これまで刺繍をしているところを直接見たことがなかったので、リンクをしたビデオでは「そこから始めるのか!」「結び玉はつくらないのか!」 など、いろいろ想像と全く違う展開にドキドキしました。
そういえば、窓の氷の模様も刺繍にも見える。
書体デザイン、カリグラフィー、そして刺繍というジャンルを超えたつながり、自然の造形と人の手のつくり出す形がますます面白い。
私の住んでいるアパートの最上階には、屋根の傾斜と同じ角度に窓があり、冬はその窓の外側に霜が降りて綺麗な模様を描くことがあります。
先週、雪の降った日の翌朝の朝日が差し込む時間に、その窓に綺麗な模様が描かれていました。黒っぽく見える点は、パラパラと降った細かい雪です。
これを、昨年の昨年の Type& オンライン講演でお話しいただいた、ロンドンでカリグラファーとしてお仕事されている下田恵子さんにお見せしました。たまたまその日メールのやりとりをしていたのです。
そうしたら、その日のうちにこんな返事をいただきました。下田さんの許可をいただいて引用します。
「オーナメンタルフロリッシュそのままですね!メインの線だけでなく、周りの産毛みたいな細い線まで。」カリグラフィーのカッパープレート・スクリプトなどの、文字から伸びたり文字以外の部分につけたりする飾り線に近い、というのです。
また、こうも書かれていました。「私の友人の絵描きが、自然のものを見て写生をしろ、と言うのもそこらへんなのかもしれません。綺麗だなと感じる字や線はこういうところに無理や違和感がないのかもしれないなと思いました。」
まったくそのとおりで、実際にこのあと下田さんはこの写真の模様を筆でスケッチしたそうです。こちらで、下田さんのお仕事が見られます。
年末年始でロックダウンのドイツ。「Kontaktbeschränkungen」(コンタクトの制限)、なるべく人との接触を避けましょうということがことがずっと言われています。
年末に、昨年秋から一人暮らしを始めた長男も加わって家族4人で家族が集まったときに、久しぶりにボードゲームで遊ぶか、と引っ張り出してきたこの「コンタクト・ゲーム」、すっかりハマってしまいました。
いまこれを遊ぶと、13年前とは別の面白さが出てきた。狭い家の小さなテーブルに収まるようにと頭を使い、もう二十歳を過ぎた子供達が「そっちに曲げちゃダメ」などと人の手に指図をするようになって大笑い。また、この小さなコマに描かれている絵が美しい。山あり川あり、古城や川を進むタンカーが見える風景がドイツだな、ということにも気づきました。
このゲームの発案者でグラフィックデザイナーでもあるケン・ガーランドさんの講演を、そうとは知らず2007年の英国ブライトンでの ATypI (国際タイポグラフィ協会)コンファレンス聴いていて、そのことを私が2008年の1月の日記 につけていた。14年前の講演の時のガーランドさんは、白いジャケットを羽織り、刺繍の入った四角い中東風の帽子をかぶって颯爽としていてかっこよかった。
ガーランドさんのサイト に、原案のゲームの図が出ています。こちら。
このゲームはドイツ製ですが、もともと私が買ったのでなく、弟からもらってドイツに持ってきたもの。ゲームの出版社が Ravensburger というドイツの出版社で、私の持っている何冊かのヤン・チヒョルトの本も出版していたりして、いろいろつながっているところが面白い。
パッケージに使われている書体も、時代を感じさせてくれます。黄色で「コンタクト・ゲーム」とあるのが写研のスーボ、その他小さい文字はナール。小文字で「contact」と書かれた部分は Futura Script をツメツメにしてつなげています。
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