エキサイトイズム エキサイト(シンプル版) | エキサイトイズム | サイトマップ
<   2020年 12月 ( 4 )   > この月の画像一覧
変異種

ここ数日、コロナウイルスの変異種のニュースがとりざたされています。二回目のロックダウンのまっただなかのドイツですが、家にこもってばかりいてはいけないと思い、家の周りなどを歩きまわるようにしています。

先日、町の反対がわに用があって行ったついでに、人のいない住宅街を一回り歩いてきました。同じ街ですが初めて足を踏み入れる場所。30分くらい歩いたと思いますが、小雨の降る薄暗い日で、その間にすれ違った人は4人くらい。

変異種_e0175918_02232893.jpeg

道の途中にあったこの広告塔は、広告ポスターが剥がされたあとの状態でした。普段から広告塔の写真を集めているのですが、この何も貼られていない状態は珍しいと思って遠めの位置から全体の写真を撮りました。

変異種_e0175918_02232898.jpg

近づいて狭い歩道側にまわると、ポスターの一部がまだ少し残っていました。ギリギリまで下がり、生垣に背中を押しつけながら、いちおうその広告も入るような写真を撮っておきました。

変異種_e0175918_02410025.jpg

家に帰って、夕食後にその広告の切れ端部分を拡大して見ていました。「DM」ということは、通過がユーロに切り替わる前のドイツマルクの時代つまり2000年以前のポスターか。そしてさらにその「DM 14,–」を見てびっくり、これは翌日早く行って、雨風ではがれて飛んで行ったり新しいポスターがその上に貼られたりしないようにしなければ!

ということで翌朝にまた同じ場所に行ってまず写真に納め、ポスターの切れ端はここ数日続いていた雨のおかげで簡単にはがすことができたので資料として保存のために持って帰り、いま額に入れて飾っています。

この活版印刷で刷られたポスターに使われていた書体は、Futura に見えるかもしれませんが、Monotype の金属活字の Gill Sans の、ドイツでの変異種です。私の持っている1930年代の印刷物にも、これと同じ変異種が使われていた例があります。「Gill Sans」の名前のままドイツで使われていたのですが、英国でのオリジナルのデザインとはいくつか文字の形が違っています。このポスターで見る限りでは、M と 1 がオリジナルとは違っていますが、数字 4 と 8、5 そしてコンマは Gill Sans のままです。

変異種_e0175918_02232845.jpeg

Gill Sans のデジタル版 で組むと、こうなります。

変異種_e0175918_05344708.png


この切れ端を見たときにすぐに気づかなかったのは、まったくの不注意でした。今日の天気は強風で横殴りの雨。数日遅かったらこのお宝が雨に流され、風で飛んで行ってしまったかもしれないと思うと冷や汗をかきます。これだから、裏通りの散歩の時でもつねに気をつけていなければなりません。


(12月29日追記)

欧文書体に詳しい Typecache の akira1975さんが、欧文デザインのコミュニティのスレッドの中から Gill Sans 変異種についての画像の載っている部分を紹介してくれました。他の文字がどのように変わっていたかを知りたい方は こちら へどうぞ。数字の4が私のこの記事のポスターのデザインと違っていたりして面白いです。



by type_director | 2020-12-28 02:21 | 書体見本マニア | Comments(0)
英語に関する書籍の選書フェア

丸の内の丸善本店で、英語に関する書籍の選書フェアがひらかれています。語学書に関わる方たちの推薦コメントといっしょに陳列されているそうです。コメントの数130ということで、英語の知識をさらに深めたい人にとっては、自分に合った本を見つけるいいチャンスかも。

私の本『フォントのふしぎ』と田代眞理さんとの共著『英文サインのデザイン』も並んでいるようです。

フェアは2021年1月末まで。

フェアに関するツイートはこちら








by type_director | 2020-12-27 13:40 | お知らせ | Comments(0)
ロックダウンの風景

ここドイツでもコロナ第二波の広がりへの懸念から、来年1月まで二回目のロックダウンが続くことが決まっています。

こないだの金曜日夕方、買い物のついでに街の目抜き通りはどうなっているだろうとのぞいてみました。

ロックダウンの風景_e0175918_19144505.jpeg

食料品店や薬局などを除く店舗はみんな閉めることになっているので、私の住んでいる街の中心部でも人がいません。金曜日午後4時過ぎでこんな様子です。

この化粧品店の入り口にはテープで X がされていました。

ロックダウンの風景_e0175918_18345391.jpg

目抜き通りの中心部、噴水の広場にはイルミネーションがありましたが、それも人通りがないと寂しい感じです。毎年開かれるクリスマス市も、今年はありません。

ロックダウンの風景_e0175918_18345456.jpeg

お城の横の広場も、去年の12月21日の土曜日午後5時ははこんなふうに市が出ていて賑わっていたのですが…

ロックダウンの風景_e0175918_19014673.jpg

今年はこうです。12月18日金曜日、ほぼ同じ時間。

ロックダウンの風景_e0175918_19214544.jpg




クリスマスの時期、いつもなら看板には「クリスマス」の言葉が入るところですが、その代わりに書かれている言葉は「きみなしではダメなんだ!」という意味。協力を呼びかけてマスクの着用を徹底させる目的のようです。

ロックダウンの風景_e0175918_19293420.jpg

「皆さん」でなく「きみ」「おまえ」というような単語を選んでいます。お役所的な通達でなく、ひとりひとりに届くようにインフォーマルな言葉で語りかけるという狙いなのでしょう。フォントもインフォーマルなデザインで、筆で書いたような雰囲気の Brushzilla を使っています。このフォントの名前のもとは、たぶん brush(筆)+ zilla(「ゴジラ」の「ジラ」)。大文字だけでオルタネート文字の多いフォントですが、下の方にある「MASKENPFLICHT」(マスク着用義務)という単語では、大文字アイに点のついたほうを使っています。





by type_director | 2020-12-20 10:34 | Comments(0)
文字の表からなくなる人種差別

ドイツに引っ越してきてドイツ語を習い始めて間もない頃、電話での会話の練習をすることになって、そのとき初めて標準の Buchstabiertafel (文字を書き表すための表)があるというのを教わりました。

たとえば電話で自分の名前を相手に伝えようとするさいに、「Kobayashi」という音声だけではローマ字でどう書くかわからないかもしれないので、一文字ずつ区切って伝えることになります。でも、「K(カー)、O(オー)、B(ベー)A(アー)… 」と一文字ずつ言った場合、発音の似通っている H(ハー)と K(カー)などの違いがわかりにくいかもしれません。

その違いがはっきり音声で伝わるように、「K wie Kaufmann(カウフマンのカー)」とか「A wie Anton(アントンのアー) 」、などと決められています。つまり「Kobayashi」を言い表す場合は表の通りに「K wie Kaufmann、O wie Otto、B wie Berta、A wie Anton…」と言えば相手が聞き間違うことがない。

その文字表が DIN 5009 という規格で決まっていたのは、12月5日の このニュース を見て初めて知りました。書体デザインで DIN 1451 はすでに多くの人に知られていますが、この DIN というのはドイツの工業規格のことで、うしろに着く番号でたとえばマンホールの蓋だったりネジだったりの大きさなどの規格に分けられています。

さて、その DIN 5009 文字表では、A の Anton から M の Marie までは人の名前で言い表していますが、N にくると「N wie Nordpol(北極のエヌ)」となっていてちょっと違和感があるな、と思っていました。

じつは、1905年の文字表では D には David、N には Nathan という名前があてられていたのに、1934年のナチスドイツ時代の改訂で David と Nathan がユダヤっぽい響きの名前なので表から抹消され、Dora と Nordpol に変更されて戦後75年が過ぎていた、そしてそれを元に戻すというのが今度の DIN 5009 改訂のニュースです。過去の人種差別や偏見に歪められた文字表をそのままにしておかない、ということなのです。

文字の表からなくなる人種差別_e0175918_19020456.jpg
これは私の持っている辞書にあったドイツ語の文字表。いくつか候補が載っているのは、一番左がドイツ国内で使用する場合の文字表、1と番号のあるのがスイス国内用、2がオーストリア用。

by type_director | 2020-12-06 07:01 | Comments(0)