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目に見えない部分にも語らせる職人技
金属活字の作り手のいろんな工夫と、それをちゃんと活かして使う職人の話、3つめ。この嘉瑞工房のカード、良い意味でネタ満載なんです。
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これまではインキの乗った、黒く印刷される部分を見てきました。ここで、とうとう「印刷しない」部分の話までしちゃいます。

英国で鋳込まれた金属活字 Caslon で刷ったカード、なんとなく、普段見慣れている文章のリズムと違う気がする。なんだか、ぱらぱらしているような…。そう、嘉瑞工房のカードは、単語と疑問符との間を少し開けている。しかもこのカードだけ意図的に。
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うまいなー。これ、カスロンが活字をつくっていた18世紀によく行われた組み方です。当時(18世紀)の Caslon の活字見本を見ると、ほら。
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実際、このカードを見せてもらったとき、嘉瑞工房の高岡さんにこっそり「スペース空けたでしょ」ときいたら、それをわかってくれたか、と喜んでた。

合字をきちんと使う、まあそれは職人として普通にやるでしょう。しかし、スペースでこういう演出までするか。

カード一枚でも、わかる人と話をするのに十分なネタがつまっています。










by type_director | 2018-05-19 02:50 | 金属活字 | Comments(2)
合字だけじゃない、職人技
こないだ引っ張り出してきた、嘉瑞工房の組版・印刷によるカードの話の続き。

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これは Wilhelm Klingspor Gotisch(ヴィルヘルム・クリングシュポール・ゴーティッシュ)で刷られたカード。ドイツ語で、合字の出てくる頻度がすごい。

金属活字で、ドイツでつくられたブラックレター書体には、かなりたくさんの種類の合字がありました。
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1行目で st 合字(s は「long s」です)が2回、ft 合字が1回、そして一行目の終わりが es の合字です。2行目も st 合字、ft 合字、 st 合字の順に出てくる。

そして3行目、細かい技を使ってます。2種類ある小文字の e のうち、1行目と2行目には幅の広い方を使い、文字の量の多い3行目には狭い e を使っています。これによって、何行かある文章の行末のデコボコを目立たなくおさえているわけです。







by type_director | 2018-05-18 07:46 | 金属活字 | Comments(0)
フランスのエスプリを味わう

きょう、町で開かれていたフランス食品市場に行ってきました。

フランスのブルターニュ地方から出店していた焼き菓子を買って、その場で食べました。

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会場のポスターは、くだけたカリグラフィというかレタリングというか、今風な感じのフォント。
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そういえば嘉瑞工房の組版・印刷によるカードでこういうのがあったな。これを取り出して眺めていたら、フランスをしっかり味わった気分になりました。

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嘉瑞工房の印刷物には、ヨーロッパのエスプリみたいなものがある。ちょっと前に、ドイツでまだ活版印刷機を毎日稼働させている博物館を訪ねたときに、そこで働いているベテランの組版工だった人や印刷の職人さんにや嘉瑞工房の印刷物を持って行ったら、組版のレベルや品質にビックリされた。自分が褒められているようでちょっと嬉しかったものです。

嘉瑞工房の組版は、きちんと合字を使います。わかりやすいように拡大します。この2行目、Excoffon (エクスコフォン)というこの書体のデザイナーの名前に、2つの f が1本の活字に鋳込まれた ff 合字が使われています。

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2つの f がそれぞれ違う形をしていて、合字のなかでも流れるような動きを出しています。前後の o と ff の合字もうまく連続して見えるのは、この活字のデザインのうまさです。ff 合字の右下に次の文字への導入部があるので、それで ffo がうまくつながっているように見えるわけです。同じ線が、次の行の単独の f にも入っているのでよくわかります。

そして印刷は、あの葉書大の印刷物をこれだけ拡大しても凹みらしい凹みがない。いわゆる「キッス・インプレッション」で、ぐいぐい紙に押しつけすぎないんです。これが良質の活版印刷印刷の証です。

合字の使い方も印刷の具合も、何気ないようでベテランの組版工や印刷工にしっかり見られていると思うんです。そういう目の肥えた人たちに手渡して恥ずかしくない印刷物です。






by type_director | 2018-05-12 20:27 | 金属活字 | Comments(0)
Wiesbaden の文字
晴れて気持ちの良い5月6日朝、ヘッセン州の州都 Wiesbaden (ヴィースバーデン)に行って、ゆっくり町を一回りしてきました。そこで見てきた文字のなかから選りすぐって載せます。
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町の中心部にどんと構えるクアハウス。1905年から1907年にかけて建てられたそうです。金属で取り付けられていた大文字はローマの時代の面影はなく、19世紀末風のバランス。
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ベッカーブルンネンという建物のブラックレターが、なんか建物と合っていてかわいい。これもやっぱり19世紀から20世紀初めのブラックレターです。
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木組みの部分に「1906年建造」とレリーフ状に彫ってある。
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ローマ時代から栄えていた都であるという証に、ここで出土した石碑のレプリカが飾ってある。実物は博物館に保存してあると書いてありました。
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こういう橋も架かっています。古代ローマっぽさの演出ですが、橋に刻まれた文字を読むと建造は1902年と書いてある。
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律儀に、本来「U」で綴るべきところを「V」にしている。
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ローマの時代には「U」の字はまだできていなかったので、その時代を演出したいときの定石の手法です。







by type_director | 2018-05-07 19:44 | Comments(0)