![]() |
Monotype 社が11月2日3日に行った Type& イベント、今年も大盛況でした。今回の Type& のロゴの「&」には、Diotima Classic Italic を使っています。
Type& イベントの会場で、Diotima の歴史をコンパクトに振り返る、そして未来につながるミニ展覧会をしました。
ふたつの展示台のうち一つは Diotima から Diotima Classic になる歴史の展示。ことし百歳になられていまもお元気なグドルン・ツァップ・フォン・ヘッセさんのご承諾を得て、Diotima 活字のきっかけとなった貴重な1948年のカリグラフィ作品もお借りしてきました。
もう一つは 嘉瑞工房の高岡さんと日本のカリグラファーたちとの共作です。金属活字の組版と印刷物とが隣り合わせに展示されました。前に この記事 で書いた金属活字の購入、じつはこのためだったんです。
高岡さんが購入した Diotima 活字を使って活版印刷で刷り、その上に日本でグドルンさんを慕うカリグラファーたちが思い思いのABCを書くというコラボレーションでした。写真右奥にある小さい塊は、このポストカードの組版。
ひょっとして展示の一部があとで公開されるかもしれません。公開されたらこちらからもリンクしますので、お楽しみに。
この企画にあわせて、MyFonts のサイトで、その Diotima Classic と、グドルンさんの100歳を記念して今年一月にデジタルフォントとして発売された Hesse Antiqua に限り、今年11月10日まで期間限定特別に半額です。良い書体はどんどん使っていただきたいです。
二つ前の記事「合字だけじゃない、職人技」について、きのう Wiesbaden の町でちょうどぴったりの例を見つけたので、その例といっしょに詳しく解説します。
Wiesbaden の町で歴史的建造物の説明会にいってきました。説明会の集合時間が朝早いので、前日から泊まりがけで。きのうの夕食後、5月の記事「Wiesbaden の文字」に出てきたベッカーブルンネンという建物をまた通りかかりました。
前回は遠くからしか見ていなかったので気づきませんでしたが、この写真右下の窓の部分をよく見ると、ガラスの部分にブラックレターで文章が書かれていました。
一部分を拡大したのが下の写真。
この3行のなかで1行目の erwähnt に出てくる e は広め、2行目 Goldgasse の最後の e も同じく広めです。このガラス一枚に収めるさいに、1行目2行目の単語が短いので t や e を右に伸ばして空間を埋めようとしていますが、3行目 Brauchwasser の最後から2番目の e は狭めに書いています。そうしないとこの単語が収まりきらないからです。もちろん e だけでなく他の字も微妙に狭くして全体のバランスを取りながら書いています。いわゆる「長い s」だけは、なにせほぼ縦棒一本なので幅の変えようがありません。他の部分でカバーするわけです。
行末のこうした調整の難しさは、一度カリグラフィをやったことがある人からわかるはず。ぴったり揃うように、あるいはデコボコにするなら行末の形が理想的なデコボコに収まるように何度か試し書きをしながら調節します。ところが金属活字の場合は、手先で調節して字の幅を変えるわけにはいきません。使えるのは出来合いの字だけ。それらを駆使して、なるべく各行末のデコボコが目立たなくなるようにします。
この金属活字 Wilhelm Klingspor Gotisch を使った嘉瑞工房の組版、3行目で狭い e を使っています。e はドイツ語でも英語でも頻出する文字なので、それを狭いものに取り替えるだけで文章一行の長さがだいぶ違ってきます。
この活字は、特殊な文字をたくさん持っていて、たいていの大文字は幅の広いのと狭いのと2種類あり、小文字にも幅の違う字や合字があって、使い方には一定の決まりがあります。
高岡さんの組版は、そのたくさんの種類の使い方が頭に入っていて、まるで活字をペン先のように調整しながら組んでいることになります。ドイツの看板職人がガラスに書いたのと同じ事を活字でしているわけです。だから冷たくない。見ていて安心するのです。
きょう、町で開かれていたフランス食品市場に行ってきました。
フランスのブルターニュ地方から出店していた焼き菓子を買って、その場で食べました。
そういえば嘉瑞工房の組版・印刷によるカードでこういうのがあったな。これを取り出して眺めていたら、フランスをしっかり味わった気分になりました。
嘉瑞工房の印刷物には、ヨーロッパのエスプリみたいなものがある。ちょっと前に、ドイツでまだ活版印刷機を毎日稼働させている博物館を訪ねたときに、そこで働いているベテランの組版工だった人や印刷の職人さんにや嘉瑞工房の印刷物を持って行ったら、組版のレベルや品質にビックリされた。自分が褒められているようでちょっと嬉しかったものです。
嘉瑞工房の組版は、きちんと合字を使います。わかりやすいように拡大します。この2行目、Excoffon (エクスコフォン)というこの書体のデザイナーの名前に、2つの f が1本の活字に鋳込まれた ff 合字が使われています。
2つの f がそれぞれ違う形をしていて、合字のなかでも流れるような動きを出しています。前後の o と ff の合字もうまく連続して見えるのは、この活字のデザインのうまさです。ff 合字の右下に次の文字への導入部があるので、それで ffo がうまくつながっているように見えるわけです。同じ線が、次の行の単独の f にも入っているのでよくわかります。
そして印刷は、あの葉書大の印刷物をこれだけ拡大しても凹みらしい凹みがない。いわゆる「キッス・インプレッション」で、ぐいぐい紙に押しつけすぎないんです。これが良質の活版印刷印刷の証です。
合字の使い方も印刷の具合も、何気ないようでベテランの組版工や印刷工にしっかり見られていると思うんです。そういう目の肥えた人たちに手渡して恥ずかしくない印刷物です。
Wikipediaで「ß.. |
by _ at 06:33 |
akira1975さん、.. |
by type_director at 13:38 |
小林さん、こんにちは。 .. |
by akira1975 at 11:19 |
> 源さん コメントあ.. |
by type_director at 22:59 |
それなら次の「J通り」は.. |
by 源 at 10:21 |
ドイツではemダーシはほ.. |
by 上田宙 at 04:37 |
> 上田宙さん 回答がお.. |
by type_director at 00:24 |
小林さま、ご回答ありがと.. |
by 上田宙 at 06:10 |
上田宙さん、mariso.. |
by type_director at 03:34 |
補足説明に使うダーシがこ.. |
by marisophie at 18:18 |
ファン申請 |
||