エキサイトイズム エキサイト(シンプル版) | エキサイトイズム | サイトマップ
カテゴリ:未分類( 491 )
欧文組版のマナー実例: 略語を目立ちすぎないように抑えた例(2)
そして、スモールキャップとは別の方法で略語を目立たなくしている例。略語の部分だけ少し小さいサイズにしています。
欧文組版のマナー実例: 略語を目立ちすぎないように抑えた例(2)_e0175918_17153140.jpeg
欧文組版のマナー実例: 略語を目立ちすぎないように抑えた例(2)_e0175918_17153104.jpeg
André Mégroz 著『Silberfischchen, Lilienhähnchen und andere Insekten』から見つけました。書体は Frutiger Serif です。

本の装丁はヨースト・ホフリさんで、彼の本ディテール・イン・タイポグラフィの中でも、本文よりも0.5ポイントから1ポイント小さいサイズで組む方法がスモールキャップの使い方などと並んで紹介されています。



by type_director | 2020-06-27 17:01 | Comments(0)
欧文組版のマナー実例: イタリック体

この「欧文組版のマナー実例」2回目の この記事 で紹介した、ファッション誌『Vogue』の表紙だけを集めた本『Vogue Covers』の解説の本文一行目、このようにまっすぐ立った書体で組まれている中に定期刊行物の名前「Vogue」が出てきたら、それはイタリック体で組みます。そして、この写真右下にあるのはキャプションで、本分と区別しやすいようにイタリック体で組まれています。

欧文組版のマナー実例: イタリック体_e0175918_01455525.jpg

では、そのキャプションの文章全体がイタリック体で組まれているときに、定期刊行物の名前など本来イタリックで組むべき語句が出てきたらどうするのでしょうか。

その場合は、この下のキャプション一行目「Vogue」がそうしているように、まっすぐ立った書体のほうを使います。

欧文組版のマナー実例: イタリック体_e0175918_01455503.jpg

要するに、通常の語句ではない何かがあると読者が感じるくらいの違いは見せるけれど、いわゆる悪目立ちするようなもの、たとえば全部大文字にしてしかも引用符で囲むようなリズムを壊すことはしないのです。


by type_director | 2020-06-17 01:45 | Comments(0)
ヘルマン・ツァップさんからいただいた活字

きょう6月4日はヘルマン・ツァップさんの命日です。早いもので、もう5年目になります。久しぶりの雨模様の今日、有給休暇をとってダルムシュタットの墓地へお墓参りに行ってきました。

今年は、ヘルマンさんとグドルンさんでお供えの花が二束になってしまったな、と思って花屋さんで白い花を選んで同じものを二つあつらえてもらい、歩いてお墓まで行くと、昨年暮れに亡くなられたグドルンさんの墓石には、まだお名前が刻まれていませんでした。ヘルマンさんの墓石は脇に寄せてあるなどまだ準備中という感じに見えたので、盛り土のところに花束を二束供えてきました。

晩年のヘルマンさんからいただいたものが、うちにたくさんあります。

先日、地下の物置の片付け物をしていて、生前にヘルマンさんからいただいた木活字の箱を久しぶりにあけてみました。文字は全部そろっていません。たぶんどこかの印刷所でもう使わなくなった活字を引き取られたのでしょう。

ヘルマン・ツァップさんからいただいた活字_e0175918_16122593.jpeg

「H.ZAPF」と組んであるのは、ヘルマンさんが輪ゴムで束ねておいた状態のままになっています。よく見ると Z が上下逆さまです。この木活字には、ネッキ(通常の金属活字でなどで、活字の上下がわかるようにボディ脇に刻んである溝)がついていないので、それで上下を確認できず逆さまになったのでしょう。

ヘルマン・ツァップさんからいただいた活字_e0175918_16122676.jpeg

スクリプト体の方は、箱の中で輪ゴムが切れてバラバラになっていました。箱にはこの書体の活字はこの四本しかないということは、これも「Zapf」に見えるような組み合わせを取っておいたと思われるのですが、それにしてはベースラインが揃っていないですね。

ヘルマン・ツァップさんからいただいた活字_e0175918_16122675.jpeg

実は3番目の文字は d です。引き取った活字に p が入っていなかったので、上下逆さにした d で間に合わせたのでしょう。

こんなところにも、ヘルマン・ツァップさんの茶目っ気のある一面が見えます。








by type_director | 2020-06-04 13:12 | Comments(0)
フランスに行った気分に

自宅勤務もすでに二ヶ月が過ぎました。最近の急激な日中の気温上昇のせいで、家の中で自分の居場所を見つけるのがたいへんになってきました。

そこで、家の中を片付ける。そのついでに地下室の荷物を整理していて、ずっと前に買っておいたワインもあけることに。中身はかみさんが味わいます。私は下戸なので、ワインの中身でなくラベルのほうをじっくり味わいます。

書体は Nicolas Cochin(ニコラ・コシャン)です。

フランスに行った気分に_e0175918_03254571.jpeg
フランスに行った気分に_e0175918_03254561.jpeg

オールドスタイル数字の5は、たいていの書体ではベースラインから下にぶら下がるのですが、この書体やいくつかのフランスの書体の場合は、下がらずに6などと同じく上に飛び出します。それでいいのです。

このワインは、2012年にフランスの Beaune (ボーヌ)という町に行ったとき、慈善施療院に付随の売店で買ってきたものでした。そのときの写真がこれ。

フランスに行った気分に_e0175918_03254414.jpg
フランスに行った気分に_e0175918_03254480.jpg
ワインラベルの書体をながめているだけで、フランスに行った気分になるのだ!

しばらくは、家の中で書体を見て癒されようかな。

この書体 Nicolas Cochin の見本は こちら



by type_director | 2020-05-26 03:24 | Comments(0)
ドイツ語ならではの単語
ドイツでも、新型コロナウイルスの影響が深刻です。会社からの通達があって、私も今日から在宅勤務です。

3月に入って、感染が確認された数が1週間で倍になるような状況が続いていて、買い物に出かけるときも人混みを避けるようにしています。先週はスーパーマーケットに行っても棚にほとんど何もないような状況がニュースや新聞で報じられていました。

週末でも、部屋にいて片付け物をしたり本を読んだりということが多くなります。これは、ちょっと前から興味を持ちはじめた、鍛冶についての本。
ドイツ語ならではの単語_e0175918_01135542.jpeg

1989年の本のリプリント版です。本文の書体が Bodoni で、やや小さめのサイズで組まれていてちょっと読みにくい。

我慢して読んでいると、みょうに背の高い字が多い単語が現れました。
ドイツ語ならではの単語_e0175918_01083523.jpg

熱した鉄をハンマーで叩いたときの材料の流れる方向を示した図です。「Werkstofffluß」つまり「材料(熱した鉄)の流れ」という意味で、「Werkstoff」と「Fluß」の2つの単語の組み合わせ。イタリック体だから f も ß (エスツェット)も下に伸びるので背の高い文字の連続になっているのです。

その後1997年の正書法の改定で、「Fluß」は今は「Fluss」と綴るので、同じ単語でも、今ならこういう見え方にはなりません。








by type_director | 2020-03-11 17:54 | Comments(0)
ö はドイツ語だけじゃない

ちょっと調べたいことがあって、W. A. Dwiggins の本『Layout in Advertising』をぱらぱらめくっていました。1928年の本です。

ö はドイツ語だけじゃない_e0175918_03092179.jpg

そうしたら、本文中に、「coördinating」という単語が出てきて、ハッとしました。

イギリスでタイポグラフィの勉強をしていたときに、ある本に書いてあったのを覚えていたのですが、そこでは母音が二つ繋がる時に「co-operation」または「coöperation」とする例が載っていたのです。「coop」部分を「コウ・オプ」と発音してもらうようにはっきりさせるための表記で、これをしないと「クープ」と読まれる恐れがあるということか、と納得しました。この写真の場合は、「コウ・オーディネイティング」になるわけです。

ö はドイツ語だけじゃない_e0175918_02055155.jpeg

現在は「coordinating」「cooperation」が一般的で、「ö」を使った表記は1800年代も今もごく稀です。Google Books の Ngram Viewer では、Google Books のアーカイブの中で出現する単語の使用頻度の年毎の推移を見ることができるので、それで調べました。

「coöperation, co-operation, cooperation」などとコンマで区切って入力すればいくつかの単語を同時に見られるところが便利。

「naive, naïve」を調べてみたら、2000年代に入って少し「naïve」が上がってきたこともわかりました。



by type_director | 2020-02-27 17:04 | Comments(1)
多言語対応

1月から2月中旬まで日本に出張していました。

日本ではあちこちでホテルの建設が進んでいるようで、こないだの出張では昨年できたばかりの新しいホテルに宿泊しました。

部屋の空調と照明のコントロールを、部屋の真ん中にあるタブレットから行うようになっていて、そのシステムをよく見てみたら、日本語と英語以外にも数カ国語の言語で表示できるようになっていました。いろんな国から旅行者が訪れることを想定しての設備なのでしょう。

私が部屋に入ったときは、日本語に設定されていました。照明を全て点灯させたい時には

日本語:ALL ON

…って日本語じゃないじゃん、と思ったけど、ドイツ語に切り替えてみると、ドイツ語がもっとおかしい。照明を全て点灯させるボタンは大文字で

ドイツ語:ALLES ANGEZÜNDET

となっていました。この言葉だけ直訳すると「すべて火がつけられた(状態)」のような意味にもとれます。動詞 anzünden はおもに火薬や火種に火をつけるときに使う言葉だし、バーベキュー用の火起こしのための着火材料は Anzünder です。

そのタブレット画面の写真を撮って、なにもコメントを添えない状態でドイツにいる子供たちに SNS で送ったら、すぐに「すげー」「着火しちゃってんじゃん」と返ってきました。ドイツ語を話す人が驚くことは間違いないです。

(2月27日追記:たまたま今日のニュースを見ていて出くわしたのがこの記事。使用されなくなった駅舎に若者が放火した疑いというニュース、見出しの5つ目の単語が「angezündet」です

気づいた人が気づいた時に伝えることで改善のきっかけになる、と思います。ホテルのフロントのかたに口頭で伝えることは難しいし、そもそもホテルの設備の不備とかでもないので、アンケート用紙に書いてお渡ししました。ホテルの居心地はとてもよく、とても満足でまた利用したいと思います、とも書き添えました。本当にそのシステムの多言語対応だけが残念です。

これが昭和の時代の設備なら、多言語対応など考えられていないのはしょうがないかもしれません。でも、最新の設備や機器のなかでもこんな状態なのです。

こんな記事 がありました。私が見た照明システムのとはまた違った次元の話だとは思いますが、「それ、伝わるかどうか確認したのですか?」という部分では同じです。私と実務翻訳家の田代さんとの共著『英文サインのデザイン』で書いたのは、そういうことです。

こちら で本の一部の試し読みができます。








by type_director | 2020-02-26 06:11 | Comments(0)
鉄の芸術
昨年、ヨーロッパの鍛冶職人の仕事ってすごいということに気付いてから、門扉や窓枠、鉄製のバルコニーなどにも注意が行くようになりました。
これは Worms(ヴォルムス)で。
鉄の芸術_e0175918_02062289.jpg
鉄の芸術_e0175918_02062111.jpg
鉄の芸術_e0175918_02062180.jpeg
鉄の芸術_e0175918_02062219.jpeg


夕暮れの Eltville で、邸宅のバルコニー。
鉄の芸術_e0175918_02062316.jpg

古本でその手の本を買って、そこで紹介されている門扉の写真を撮りに行くこともありますが、このBorbeck 城ではいま改修工事が行われていて、門扉はすでに取り外されたあとでした。
鉄の芸術_e0175918_02062071.jpeg
鉄の芸術_e0175918_02062125.jpeg
鉄の芸術_e0175918_02062313.jpg
鉄の芸術_e0175918_02103358.jpg
どこかに保存されていて、改修が終わった後に元通りにしてほしいと祈る。






by type_director | 2020-01-12 02:00 | Comments(0)
フランクフルトのクリスマス風景
フランクフルトの年の瀬の風景です。文字のあるものを選びました。

フランクフルトのクリスマス風景_e0175918_00363616.jpg
フランクフルトのクリスマス風景_e0175918_00363721.jpg











by type_director | 2019-12-24 16:36 | Comments(0)
グドルンさん 

グドルン・ツァップ・フォン・ヘッセさんを慕う多くの日本のかたに、とても残念なお知らせをしなくてはなりません。

今月13日に、グドルンさんが亡くなられました。

その日は、朝から湿った雪の降る暗い灰色の日でした。夕方に電話があって、お孫さんからの涙声の報せでそのことを知りましたが、最初は何のことかまったくわかりませんでした。たった2週間前の11月30日にグドルンさんのお宅にうかがったときは、いつもどおりお元気で、「では年明けに、102歳のお誕生日のお祝いにまた伺いますよ」と握手を交わしてきたばかりだったからで、そのときのようすをお孫さんに伝えました。

最後の訪問のときも、いつも通りにグドルンさんはご自分で入れた紅茶をいそいそとすすめてくだって、私もいつも通りにケーキを2ついただいてきました。10月に東京で開かれた、活字の Diotima とカリグラフィのコラボレーション展のご報告をして、展覧会の様子を写真でご覧いただき、またこれもいつも通りに、半地下のグドルンさんの工房で製本の道具やグドルンさんの装丁による革の表紙の本などをじっくり鑑賞させてもらいました。

ヘルマン・ツァップさんが2015年に亡くなってからも、仕事とは関係なく、この4年間ほぼ隔月ごとにグドルンさんのお話を伺いに行っていました。花を持って行ったり、グドルンさんの書体の使用例を見つけたときはそれを持って行ったり、グドルンさんに喜んでいただけるそうなものを探しては持っていくのが楽しみでもありました。

そういえば、2年前には こんな記事 も書いていました。アメリカのシアトルで撮った写真を届けた話です。このときは私の恩師、高岡重蔵先生もまだご存命でした。

もちろん、アメリカでも日本でも見つけたものは買ってお届けし、持っていけないものは写真に撮って帰り、ご覧いただきました。昨年の3月で雪の中、私の生まれ育った街である新潟で Diotima の使用例を見つけていました。ホテルから買い物に出たついでに、いつも大通りじゃつまらないからちょっと脇道に入ろうという気になって車一台がやっと通れるような道を歩いていたら、目の前に洒落た洋風のアパートが現れ、そのアパートの名前が Diotima で堂々と組まれていたので写真に収めました。ドイツに戻ってすぐ写真をグドルンさんに届けに行ったときは、ことのほか喜んでくださったのを覚えています。


おととい12月20日、グドルンさんのお葬式に参列してきました。この鮮やかな朝焼けの中、ダルムシュタットの墓地に向かいました。

グドルンさん _e0175918_06393106.jpg

葬儀の後、ヘルマンさんの眠る墓地にグドルンさんの棺が納められるときには冷たい雨がパラパラと降り出して、埋葬が終わって親類縁者の方々と食事を一緒にした後もずっと降り続けていました。


きのう、年末に備えて食料品を買い足しに、普段行くのとは違う場所のスーパーマーケットに入ったときのことです。

レジの手前にあるワイン売り場の棚を通りかかったとき、いつもの癖でワインの棚に目が行き、ラベルの書体を片端から見始めてわずか数秒、グドルンさんの Smaragd (スマラークト=宝石のエメラルド)が使われたラベルが目に入りました。「DU CARTILLON」そして「2015」の数字がそうです。買って帰り、家のテーブルで眺めています。

グドルンさん _e0175918_06362634.jpeg

グドルンさんにこのワインお見せしたかったけど、間に合わなかった。ここにきて、私はいろいろと間に合わないことを繰り返している気がします。







by type_director | 2019-12-22 22:33 | Comments(0)