ロンドンの南にある
Type Museum です。3月25日に嘉瑞工房の高岡さんたちやカリグラファの友人たちと行ってきました。
もちろん、活字のできる行程とかモノタイプの仕組みとかもデモンストレーション付きで見せてくれるんで、カリグラファの友人たちにはそちらの方がウケがよかったみたいですが、個人的に一番テンションの上がったのが、Stephenson & Blake (スティーブンスン・アンド・ブレイク)の活字のパンチ(父型、または種字)やマトリックス(母型)倉庫です。これは私がこの博物館を10年くらい前に見学したときにはなかったけど、その後スティーブンスン・アンド・ブレイク社がやめちゃってから引き上げてきたものだそうです。
じつは私は1993年ころにスティーブンスン・アンド・ブレイク社に直接行って、その時はまだ細々と営業を続けていた同社の社長の案内付きでこの倉庫を見ているわけですから、この棚たちとはこれで二回目の対面になります。無事でよかった。
スティーブンスン・アンド・ブレイク社で、社長と一緒に倉庫に行くときに、中が薄暗い旧式の狭いエレベーターに乗りこんで、蛇腹式の鉄格子みたいな扉をガラガラガチャンと閉めたあとで、社長に「これからトゥーム(tomb:墓、納骨堂)に行くぞ」と言われたときはゾクッとしました。「なんでトゥーム?」と聞いたら社長さんは「ここにボディが眠っているから」と言ってにやりと笑いました。シャレなんですよ。body は「死体」と「活字の本体」とをかけたわけです。
この棚はハリー・ポッターの映画でも使われたとか。
引き出しを引っ張り出して見ると、こんな書体がありました。
ドイツの家に戻って、うちの本棚のスティーブンスン・アンド・ブレイク社活字見本帳に同じ書体があるかなと思って探してみたら、「Lining Old Style Grotesque」という名前で出ているのが近い。これも「グロテスク」って呼んでたんだ。書体の名前なんてけっこう適当につけたんだなあ。
ロンドンの観光ガイドには絶対載らない活字博物館。ここは一日いても飽きないところです。
活字製造の工房においてあった椅子が良い形をしていた。ちょこっと腰掛けるのにちょうどいい。私は普段は立って仕事しているので、椅子は要らないんですけどね。