2009年2月に大阪と東京で開かれた展覧会「ヘルベチカ・フォーエバー」のギャラリートークでもちょこっと話しましたが、「Helvetica はスイスの国家的書体」なんてことは決してありません。たしかにスイスでつくられ、「Helvetica」という名前も「スイスの」という意味なんですが、Garanond、Caslon、 Bodoni と同様に Helvetica も世界中で使われる書体です。
Lufthansaドイツ航空のハガキです。Helvetica で組んだだけのロゴを、こんなにも誇らしげにアップにする会社って他にある?
Lufthansa は機内誌もチケットもすべて Helvetica。
Air France の機内食メニュー。Helvetica の細いウェイトをこざっぱりとおしゃれな感じで使っていました。たしか3年くらい前のもの。
少し前まで、ドイツ鉄道も Helvetica を全面的に使っていました。数年前からは特注書体に切り替えましたが、まだあちこちに残っていますよ。これは 2008 年末に撮ったドレスデンの駅。
列車遅延の証明と運賃払い戻しについての説明書き。私のこれまでの経験では、この紙をもらえるチャンスは高い。うれしくないけど。
ロンドンの新しい名物、大観覧車「ロンドン・アイ」のロゴも Helvetica の細いウェイトでした。施設は料金表に至るまで Helvetica。
Helvetica の例のしめくくりはニューヨーク地下鉄の切符。
逆に、スイス最大の国際空港、チューリッヒ空港は何の書体を使っていると思いますか?
Akzidenz Grotesk(アクツィデンツ・グロテスク)です。ドイツの活字会社 Berthold 社の19世紀からのロングセラーです。
これで分かるとおり、「Helvetica はスイスの国家的書体」なんてことはないんです。