撮りためた写真の整理をしてたら、ひとつテーマができました。
「ロゴとかで大文字と小文字とが混ざっているのって、どうなの?」と不安に感じる人のために。
サントリーさんの新ロゴの選定と最終デザインのまとめについての助言をしたのがマシュー・カーターさんと私なので、新ロゴ発表の直後にセミナーなどで「あの SUNTORY の新しいロゴの U と N は小文字だけど、大文字と小文字を混ぜてもいいのか」みたいな質問を受けました。その時、ちょっとふざけてこう言ったんです。「実はあのロゴの S も O も小文字です」。
サントリーの場合は、とくに「やんちゃ」さや「水の柔らかさ」が求められたということもあったので、ちょっとインフォーマルな感じの字形を選ぶことになりました。選考委員のマシュー・カーターさんも私も、N の字形については特に気にしませんでした。普段ローマ字に接している人の目から見て問題なく読めるなら、大文字か小文字かということを決める必要もないわけで。
もっと肩の力を抜きましょうよ。絶対的なアルファベットの形がひとつだけ存在するみたいに堅く考えずに、自然発生的な字形のバリエーションみたいなものというふうに考えてはどうでしょう。
ひげそりでおなじみ、BRAUN の N の字は小文字かどうか、なんて気にしないでしょ?
例えば、大文字アイの上に点を打って i としている手書き看板があちこちにあるのを見ると、それはデザインとは無縁で、看板の職人や店の(デザイナーでない)従業員が無意識にやっているようなことだと思います。親父の代からそう書いていたから、みたいなね。
これはドイツの日曜大工店の砕石売り場で。
私は普段でもペンで大文字 U を u の形で書きます。日本の専門学校で教えていたとき、「先生、それは小文字です!」と言われたことがありますが、ヨーロッパだと、一回も言われたことがありません。大文字で u の形の例なんかいっぱいありますし、ローマ字を普段着みたいに使っている人たちは、いろんな書き方があるというのを経験的に知っているからでしょう。
ロンドンの香水の店。 U の字形に注目。
マルバツ式の考え方にならないで、気楽に気楽に。小文字の話は、雑誌『デザインの現場』の2009年2月号にもまた別の角度から書いてます。
会社にあった皿洗い用ブラシ。ドイツ製。T の字形に注目。
イタリアはフィレンツェの文房具屋さん GIANNINI。 N の形が良い味出してます。