3月半ばですがまだ冷たい風の吹く中、Erbach (エアバッハ)の城を見に行ってきました。


城の反対側に回ってみると、左右を紋章に飾られた入口があり、その上の部分に「この城はエアバッハ伯爵ゲオルク・ヴィルヘルムとブロイベルク公爵によって建てられた」ということが記されています。


この大文字の大きさがまちまちで不揃いにも見えるんですが、これは
Chronogramm (クロノグラム)というもので、文章の中に隠し入れたローマ数字でその建物の建造年を表しています。「隠し入れた」特定の大文字を一回り大きくすることでヒントを出しているわけで、その大きい大文字だけを拾って足し算していくと建造年になります。これはドイツでよく見かけるけどイギリスでは見たことがない気がする。
書かれている言葉の3行目から Avenir Next の大文字とスモールキャップを使って組んでみました。

一回り大きくなっている大文字、つまりローマ数字を足していきます。

ふつうに「1736年」と書かずに一種の謎解きにしてちょっと凝っているわけで、数を合わせるために Wilhelm の W を VV と分解する必要があったんです。
このことは、ドイツに来てまもなく友達付き合いをするようになった熟練の組版工のゲオルク・カンドラーさん(当時90歳)から教えてもらいました。いっしょにブラウンシュバイクの町を歩いたときも、クロノグラムのある建物の前で立ち止まって丁寧に数えて足し算してくれたことを思い出しました。