二つ前の記事で書いた「インクボール」 や「ダッバー」 と呼ばれるものは、活版印刷の活字の上に薄く均一にインキをのせるためのタンポのような道具で、ゴム製のローラーができる19世紀より前はそれを使っていました。
これは数年前にベルリンの Deutsches Technikmuseum(ドイツ技術博物館)に行ったときに見た印刷機の展示。木製の印刷機(複製)とインクボールがありました。インキをつけるタンポ部分は革製で、木製の把手がついています。
今インクボールを使って活版印刷をしているのを見ることはまずないと思うのですが、ドイツでは印刷業のシンボルとして生き残っていて、印刷に関係のある場所でよく目にします。
ドイツの印刷業のシンボルは、インクボールを両手に持つグリフィンです。下はダルムシュタット市にある印刷博物館に飾ってあった、職人として一人前になった人に渡される証書です。使われている活字書体は、Rudolf Koch 作の Wilhelm Klingspor Gotisch です。合字(ごうじ)の使い方が見事です。
下の写真の店は現在本屋になっていますが、インクボールを形どったこういうシンボルがあるので、少し前は印刷屋だったことが伺えます。この上の証書の飾ってある建物とは全然別の街ですが、偶然にも店のガラスに書かれた書体が Wilhelm Klingspor Gotisch でした。