日本では、 ブランドのロゴや案内サインで [ ] という形の括弧をよく見る気がします。()と同じように使っているか、とくに必要ないけれど飾り的に、みたいな使われ方が多い気がします。
先週、このブログのコメント欄で、日本人の名前をローマ字で表記するときにドイツではどのようにするか、現地の人の発音にあわせて変えるのか、というご質問を読者からいただきました。その答えの中で、漢字では同じでも「ナカシマ」さんと「ナカジマ」さんがいる、などの例を出しましたが、そういえば日本の読み方も「ニホン」「ニッポン」と二通りあるなと思いました。
話はちょっとずれますが、イマヌエル・カントの『永遠平和のために』(初版1795年)の1946年版(左)と現代の Reclam 文庫版(右)を見比べてみます。
![[ ] の使いかた_e0175918_23051461.jpeg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/27/18/e0175918_23051461.jpeg)
1946年版では、日本のことを「Nipon」と表記しています。これだと「ニーポン」のように読まれるかもしれません。
![[ ] の使いかた_e0175918_23051482.jpeg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/27/18/e0175918_23051482.jpeg)
2013年 Reclam 版では、「Nip[p]on」と p を付け加えています。
![[ ] の使いかた_e0175918_23415944.jpeg](https://pds.exblog.jp/pds/1/202202/27/18/e0175918_23415944.jpeg)
「Nip[p]on」は、出版元が原書の綴りに p を入れて正しく「ニッポン」と読めるようにした、ということになります。
[ ] をつけず p をそのまま入れたのでは、原書とは違うということになるので、編集作業で脱字を補ったことを示すときに [ ] を使います。ほかにも、編集側で解説を入れようと判断した場合にも [ ] でくくってから解説を入れます。1946年版のほうは、原書の綴りのまま出版したものです。
1946年版に使われている金属活字は Breitkopf-Fraktur です。ちょうどカントの世代、18世紀中頃の書体です。