ドイツのアルファベットには、ß という文字があって、「エスツェット」と呼ばれています。この道路名標示の最後から2番目の文字がそうです。
ギリシャ文字のベータではなく、発音も「s」になります。小文字 s をふたつ(縦に長い s と小さい s )続けた文字だったので、エスツェットはつねに小文字扱いだったのです。
2008 年の初めに、このエスツェットに大文字ができることになりました。 Unicode そして国際規格 ISO/IEC 10646 の文字コードを与えられ、正式に文字としての仲間入りをしたことは、当時ちょっとしたニュースになりました。多分ドイツでだけ。
その後、すべてのフォントにその大文字エスツェットを付け足す必要があり、どんな形がよいのか議論したりして仕事が急に増えたのを覚えています。
ただ、その後大文字エスツェットの使用例を見たことがまったくなかったのです。大文字の列の中に、こんなふうに小文字のエスツェットが入るのはいかにも素人っぽいし、見た目もよくありません。こういう場合は、2008 年より前ならば大文字の「SS」で置き換えるのが常識でした。
先月立ち寄った街でお土産屋さんを覗いてみたところ、このリキュールのラベルで目が止まりました。これこそ、12年目にして初めて出会った大文字エスツェット使用例!
ドイツ人の友人に見せたら、彼もそれまで見たことがなかったそうです。