ついこないだ発売された、『ディテール・イン・タイポグラフィ 読みやすい欧文組版のための基礎知識と考え方』の元の本の著者、タイポグラファーのヨースト・ホフリ(Jost Hochuli)さんがデザインした本です。Frutiger Serif の使用例として購入しました。
先日、日本で『ディテール・イン・タイポグラフィ』の日本語版の組版をした一瀬さんから情報をいただき、こちらの版元から購入しました。本のタイトルは『Silberfischchen, Lilienhähnchen und andere Insekten』。
話によれば、ホフリさんがこの本にデジタル版 Meridien を使おうとして、古いバージョンのデジタル版 Meridien にはオールドスタイル数字もスモールキャップのないのでどうしようか悩んでいたところ、ある人に勧められ Frutiger Serif が事実上 Meridien のアップデート版であるということがわかり、それで使ってみたそうです。
本が届いてさっそく開いて、本文の部分のしっかりとした黒みを見て、ああこれはミディアムのウェイトを使ってくれたんだ、ということがすぐにわかって嬉しくなった。
巻末には、デザイナーのホフリさんの名前とともに、Frutiger Serif のミディアムとミディアム・イタリックで組んだことが書かれています。ミディアムのウェイトは、まさにこのように本文サイズで使っていただくことを想定して、レギュラーとボールドのちょうど中間ではなく、わざとレギュラー寄りにつくっていたんです。
これはレギュラー、ミディアム、ボールドの H を重ねてみたところ。真ん中の線がミディアムです。
このミディアムが、しっかりした黒みの本文書体として機能するように、というねらいです。要するに本文に向くウェイトが2つあるのです。そのことがホフリさんにわかっていただけたんだと思うと感無量。
もちろん、フルティガーさんがちゃんとつくってくれた Meridien が最初から良かったからなのですが、プロジェクトを立ち上げるとき、経験豊かなプロがこういう書籍できちんと使えるようにデザインを見直そう、ということで、さらに磨きをかけました。フルティガーさんのベルンのご自宅まで何回も伺ってデザインを詰めています。
スペーシングもすべてやり直し、オールドスタイル数字もスモールキャップも付け足して整えた結果、わかっている人にキッチリと使っていただける。嬉しいです。タイプデザイナー冥利に尽きるとはこのことです。
日本の書籍では、小泉均さんがアドリアン・フルティガーさん著の『図説 サインとシンボル』で Frutiger Serif を使ってくださっています。