今年3月の
この記事で書いた、フランクフルトで開かれているグドルンさんの展覧会に行ってきました。
3月末に開かれたオープニングイベントにも行っていたのですが、その時はゆっくり展示物を観る時間がなかったので、先週カリグラフィ関係の友達と一緒に行ってきました。
会場の入り口のポスター。グドルンさんご自身がデザインされました。書体は
Alcuin です。
ゲーテ博物館の常設展示の室内のところどころにグドルンさん作品が展示されているという形で、紙にペンで書いたカリグラフィ作品以外にも、ブックバインディング(本の装丁)の仕事の実物や鋳物の作品が置いてあるのが貴重です。
これはゲーテ博物館の図書館のドアにかけられていた「図書館入り口」の文字。真鍮で鋳込まれています。
書体デザイナーとして、あるいはカリグラファとしてグドルンさんのお仕事が知られることが多いのですが、この展示ではブックバインディングの仕事もちゃんと見せています。
会場では、ガラスケースに収められているので手で触れることができないのが残念ですが、グドルンさんのお宅で実際にさわらせていただいたことが何度かあり、革装の本が同じ革のケースにすうっと収まるときの感触がたまらないです。ケースの口の上に向けて、そこに本の端を入れて手を離すと、本がそれ自体の重みでゆっくりと下に降りていく。グドルンさんに以前お話を伺ったとき、この直線の金箔の箔押しの時は、定規など使わずに、長い棒に真鍮の円盤状のものがついている道具で付けるのだそうです。棒の端を右肩にあてて両手に持って箔を押しつけているところの写真も見せてもらいました。
そしてこの、グドルンさんの書体 Diotima の大文字を使ったタイトル部分に目が釘付けに。スペーシングが完璧なのです。
この文字部分の箔押しはどうやっている?熱を加えるから鉛の活字では難しいのでは?一文字一文字押しつけていってこの完璧なスペーシングが可能なのか?といろいろ疑問が。
この展覧会のあとまたグドルンさんのお宅にお邪魔してうかがってきました。そうしたら、印刷用の金属活字を使っているのだそうです。もちろん金属活字はわりと低い温度で溶けるので温度に気をつけなくてはいけないけれど、そこさえ気をつければ大丈夫で、スペーシングは数文字単位で活字を並べて押しつける道具があってそれも見せていただきました。写真を撮るときにぶれてしまいましたが、これです。
一列全部を一度に押しつけることはせず、「PLUS ULTRA」は3回に分けて「PLU」「S U」「LTRA」と押しているそうです。
それにしても、スペーシングが美しい。ずっと見ていたくなる。文字ひとつひとつの美しさも大事だけれど、文字の「間」も同じくらい大事だということが、この一行からよくわかります。