今年は、公共サインについて考えることが多い年でした。公共サインについての大きな講演を二つしています。
まず1月に、日本サインデザイン協会のフォーラムで、日本の公共サインの英文の表記について話す機会をいただき、翻訳家の田代眞理さんといっしょに登壇しました。田代さんは英文表記について、私はデザインの視点からサインの英文の書体の選び方や使い方についてやや辛口の提案をしました。
そして11月には、エコロジー・モビリティ財団の主催する「バリアフリー推進勉強会」で、サインの文字の読みやすさについて、ドイツの新しい DIN1450 規格の考え方と照らし合わせながら日本のサインがまだまだ改良の余地があるという話をしました。そのときのスライド資料の一部がこちらで公開されていますので、興味のある方はどうぞ。(実際の講演では、DIN1450 規格の中身について解説をしましたが、 公開用資料では著作権の関係で割愛している点をご了承ください)
いずれの会も、たくさんの方にきいていただきました。質疑応答のコーナーや懇親会では、普段のデザイン関係の講演ではなかなか出会えないような参加者の方からもたくさんのご質問や励ましのお言葉をいただいて、勉強になりました。
そして今年の12月には、日本の「止まれ」「徐行」の標識が英文の入ったものに変更されるという知らせが入ってきました。この記事の図を見ると、左右をやたらに詰めたがる日本の公共サインのクセがここでも出てしまっています。左右を詰めてその結果タテの線がヨコよりも細くなっちゃう。
比較しやすいように図を転載します。
このやり方って、「高さ」だけ必死でクリアして、実際の読みやすさのことは考えられていない気がするんです。「上げ底英文」とでも言ったら良いでしょうか。
さて、私が写真で集めている各国の「止まれ」の標識を比べてみましょう。一部は、私の本『まちモジ』(グラフィック社)の中でも取り上げています。
これは2点とも私の住んでいるドイツ。
左・右の順で、イタリアとスペイン。
フランスとルクセンブルク。
イギリスとオランダ。イギリスの例はロンドンで、後ろに赤いバスが走っています。イギリス在住のカリグラファー、橋口さんに撮ってもらいました。
ベルギーとトルコ。トルコ語の「止まれ」です。でも赤の八角形は他の国と共通。
2点ともアメリカ。左はミルウォーキー、右はニューオーリンズ。
ここでご覧いただいたとおり、アルファベットを普段から使っている国では、縦長の字形を使っていても、タテ線が細くなっちゃうような過ちは犯していないことに気づかれると思います。この件は前から気になっていて、ブログではこちらに、また「バリアフリー推進勉強会」の公開資料でも細かいことを書いています。