日本のなかでも、注意書きに英語が添えてある例が増えてきました。
でも、なんとなくギクシャクして読みづらい。綴りは間違っていないのに、一瞬考えないと伝わらない。途中で読みたくなくなってしまう。そんな欧文のサイン表示や注意書き、けっこう多いんです。欧文の読まれ方のメカニズムを知っていれば避けられるミスなんです。

写真の「Emergency」や「stop」、小文字 g や y、p を切り詰めた形なので読みにくいですね。日本語フォントに含まれるローマ字の典型的なデザインです。
電光掲示板の英字にもなかなかスゴイものが。

これはデジタルフォントとは違うでしょうが、英字の情報を見る人にとっては、だれがつくっているかとか、アウトライン表示かドットなのかは関係ないですからね。ここでも g や y がかわいそうなことに。

たいていの日本語フォントに含まれるローマ字は、小文字の g や y などの下に飛び出る部分を極端に短くしているなど、本来のバランスを大きく変えたものが多いです。つまり、それで英語などの単語や文章を組んだら読みづらい。
でも、公共サインや注意書きで英字で文章を付け加えるのは、当然ですが、英語で書かれた情報のほうが日本語よりもわかりやすいという人たちのため。
英字で組まれた文章を読む人は、一文字ずつ識別していくのではなく単語の輪郭の形を瞬時に認識して読むといわれています。そのさいに、単語の大まかな形を特徴づける小文字の d や y などの上下に飛び出る部分は、読み取るきっかけとして必要です。

上の例は、読みやすさで定評のある欧文書体 Frutiger の改良版、Neue Frutiger です。 小文字 y などの下に出る部分のほどよい飛び出し方に加えて、自然な字形と適切な文字間が読みやすさにつながっています。こちらのブログで書いたように、成田空港第3ターミナルでも使われているフォントです。


この「Departures」の p と、一番上の写真の「stop」の p と比べてみてください。こっちのは安心感が違う。