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手を動かすこと
オランダのデン・ハーグにある王立芸術アカデミー(KABK)。
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ここでは、書体デザインを教えるコースがあって、毎年12人の学生に教えています。去年に続いて今年も、コースの先生たちに混じって学生の書体の講評をする役目を任されたので、6月12日と13日の二日間行ってきました。今年はたまたま受講生側の事情があってコースの人数は8人になっていましたが、粒ぞろいの8人です。

6月12日は朝7時半の列車でフランクフルトからデン・ハーグへ。昼過ぎに到着して、コースの先生たちといっしょに名物のニシンの屋台でお昼を食べ、お学生たちのプレゼンテーションを聞きます。そのあとで、コースの主任教授を始め先生たちで生徒ひとりひとりへの指導方針を相談。私もそれに加わります。天気が良かったので、外に出て中庭のテーブルを囲んで座る。

これは中庭での会議の前。青空です。こういうところで会議するんだからオープンで良いです。会議のあと、教室に戻って学生を集め、それぞれのプロジェクトが進むべき方向について伝えます。
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翌13日は、私一人で学生さん全員を担当。ひとりひとりに書体デザインについて助言しました。もともとレベルの高い学生への指導だから、とうぜん細かい部分の質問も受ける。11時ころから始めて、全員へ助言が終わったのが1時半、でも疲れるどころか楽しくてしょうがない。お昼を食べるのを危うく忘れるところでした。

レベルが高いのにはわけがある。コースの前半で、徹底して手を使うから。受講生は、目の前にあるコンピューターを数ヶ月間使えず、紙と筆やペンしか与えられないのです。

良い曲線とは、良い形とは何なのか、そういうことがわかるようになるには手を動かして自分でつかむようになるのが大事、と私は思っています。12日の夕食の時間、手を動かすことの重要性について、コースの先生の一人エリックと話しました。エリックもまったく同じ考えで、手さえ動かしてアイデアを見える形にできたら、専門外の分野の人にも伝えることができる。そのスケッチを見た技術者に伝わり、その技術者たちが協力してくれて実現につながる。実際そういう例はたくさんあるという話をしてくれました。

これは書体デザインだけでなく、グラフィックデザインについても言えること。日本の美大の一部では、どうかすると本を読んだ知識とか理屈が先行するきらいがあるけど、そんなことじゃ世界で通用しないと思っている。こないだ見てきた北京や香港の学校のほうがずっとしっかりしていた。

手で何ができるか、そこが大事なのだということをわかって、それを続けている学校は強い。それをこの二日間で確認しました。そういうことを日本でも繰り返し言っておく必要があるなと思います。

書体デザインコースの教室の壁。
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by type_director | 2014-06-14 06:41 | Comments(0)