ドイツのタイポグラフィ関係の出版物でかなりの位置を占めている出版社 Hermann Schmidt Mainz の最近のカタログ。
これは開いたところ。
日本でだけ言われている都市伝説「Didot はフランスの書体、 Bodoni はイタリアの書体であって、使う国を間違えると大変なことになる」を軽くふっとばすように、Didot と Bodoni を混ぜて使ってます。
目的は、見出し数行の全体の濃度やヘアライン(細い線)の太さを揃えることにあったんだと思います。
見出しの文章で使う Bodoni Bold Italic を拡大してイニシャルに使うと、確実にヘアラインが太くなってもっさりした感じになる。だから、元々ヘアラインが極端に細くて大きく使ってもシャープさを保てる
Linotype Didot Headline Roman を使ったんじゃないか。
日本の都市伝説は、書体選びは出自が大事、なんてところから起こったんだと思いますが、そういうのと明らかに違うレベル。
だいたい、表紙で「ドイツより愛をこめて」って言ってますから。「フランスの書体?イタリアの書体?」、そんなことは百も承知の人たちがこのカタログを組んで、同じように書体のことを知っている、または知りたいと思っている読者層に向けて届けている。
使われる大きさ、紙の質、その文字が何色で刷られるか、文章の内容の硬軟などなど、書体選びのファクターは何十種類になるはず。引き出しを多く持っていることのすばらしさ、それをこのカタログが教えてくれています。