ドイツの文字を見慣れない人にとって読みにくいのは、「長い s」だけじゃない気がする。
すらすらっと読めますか?
1行目と3行目は苦しいんじゃないでしょうか。
それぞれ3番目の文字は c なのか r なのか?
これは「Marbachweg Am Dornbusch」と書いてあって、正解は r です。
そういえば、一つ前の記事で書いた、つぐみ横町の2番目の文字もこんな r でした。
左の縦画が、縦画一本で終わらない。空きを埋めるためなのか、右にぐっと曲がっているから、慣れない人にはちょっと読みにくい。
これがカクカクしたドイツ文字だと、この手の r もなんとなく読みやすい気がする。
下から2行目、「Bauern-」の r は右に曲がる部分が直角だ。
これもそう。「Kronenkellerei」。水平線のほうが縦画より太い。
でも、ちょっとがんばれば、読めますよね。
ドイツ文字はカタチ的に特殊だから、「ルールに当てはめると、こういう書き方になっちゃうんだね」というふうに読む前に心の準備をするからじゃないか。
それが、筆記体のなかでのあの「Marbachweg Am Dornbusch」の r だと、現代の人にはちょっと違和感があるかも。なんか、単語全体を見て「ああ、普通の筆記体ね」って読み始めたら、いきなり特別ルールが出てきて不意打ちを食らう感じ。
半世紀くらい前のドイツの金属活字書体では、けっこうそういう r が入った書体がありました。
Klingspor 社の活字、Gavotte (ガボッテ)。
単語は「Erregungen」です。
Johannes Wagner 社の活字、Arabella Favorit(アラベラ・ファボリート)。
一発で「reform」って読めましたか?