「今年こそ何か新しいこと始めよう!」なんて思いながらも、肝心の「何か」を決めかねている人に。
カリグラフィがいいですよー。自分で手書きの凝ったカードを書きたい、という人はもちろんですが、グラフィックデザイナーの人にもおすすめですよ。目が鍛えられる。空間とか曲線の訓練になる。ぜったいためになる。
この2冊は、どちらもつい最近出たばかりのもの。今は、こんなにいい手本があるんだね。始めるしかない!
左は英語で、右は日本語です。どちらも、カリグラフィ用ペンを持ったことのない初心者向けらしく、始めの部分は内容が似ています。写真やイラストで丁寧に用具の種類や使い方の説明がある。ペンの持ち方、専門的な用語の解説、歴史についてもちょっとある。
だったら2冊とも同じじゃない?って思われそうなんですが、内容を見比べてみました。
まず、この『カリグラフィー・ブック: デザイン・アート・クラフトに生かす手書き文字』から。
著者は、あのツァップ展を開催した
J-LAF の代表、三戸美奈子さんです。他にも、糸でとじる製本の部分は星さん、このあと書くローマン体大文字は白谷さんなど、数人の優秀なカリグラファーが協力しています。
この本の強みは、なんといっても日本語で書いてあるのでとっつきやすいこと。入門者にはぴったりです。ただの書き方のお手本とかだけでなく、文字と文字との間、行間についても良い例と悪い例を見せながら解説していくので、わかりやすい。見本もキレイ。世界レベルのお手本です。
そして、個人的に超オススメのページは、平筆によるローマン体。これがキレイなんだー。まず、ながめているだけで軽く1時間くらいはうっとりしてしまいます。
しばらくして我に返り、細かいところに目をやると、絵の具がムラになっている部分に気づく。例えば上の写真の R の縦画の下の方と、S の左斜め上の細いところ。これは、S でも一筆で書くわけじゃないので、わざわざ薄めの絵の具で、筆の重なったところが濃くなって見えるようにしてくれているんだ。ボーッとながめているだけでもローマン体大文字のしくみがつかめるようになっているんだ!
もちろん、それだけじゃなくて、T の横画、S の左下みたいな難しい場所は、筆の返し方まで一画ごとの解説付き。
こんなに親切なローマン体大文字の解説って、英語圏でもなかなかないと思うよ。
私の本や、デザイナーを対象にした講演でも、ずっと平筆を持つことの大切さを説いてきたんです。「ローマン体大文字のことを理解したければ、理屈ででわかろうとしないで、平筆を持って書いてみましょう」なんて。そう言いながら、デモンストレーションで書いている文字がヘタだなと自分でも思ってたんです。
こんな本があったらな、ってずーっと思ってました。それが現実に。こんないい手本があるなんて今の日本の人は幸せですよ。
今すぐ平筆を持って書いてみよう!
もう一冊の本は、べつの記事で紹介します。