日本に行くと、欧文タイポグラフィを勉強するにはどうしたらいいか、あちこちで尋ねられます。
そのたんびに、「古本屋に行って洋書やファッション雑誌を手当たり次第に買ってページをめくって書体を使われ方を見ればいいよ」というようなことを言います。良いものも良くないものもあるだろうけど、それがまた、ためになるんです。
何とかしてそれをうまく伝えられないか考えていたときに出会った、実にぴったりの文章があります。TypeTalks でも、新潟の話し会でも例に出しました。その後、いろんな人にこの話をしたら、そのとおり!という返事をもらうので、私のお話会に参加できなかった人のためにここでちょっと書きます。
糸井重里さんの本『思い出したら、思い出になった。』の中の、「『まずは、ボールだ』」っていう文章が良いんですよ。
こう始まります。
あなたが、サッカーをしたいのなら、
まず、何を手に入れますか?
ボールでしょう。
長いから途中数行飛ばしちゃいますが、そのあとで、こう続く。
だけど、ついつい、
うっかりしてると、ルールブックを
先に手に入れようとしちゃったりするものです。
また途中飛ばして、こう。
ボールを投げるとか、ボールを蹴るとか、
もういっそ、ボールと寝るとかね。
そんなふうなことが、はじまりです。
この先、ここで書けない。まだ続くんだけど、あとは本で読んでください。
いま読んでも、本当に涙ぐんじゃいます。
この本、新潟のいとこから、たまたまもらったんですよ。彼女はグラフィックデザインとか関係ないんですが、糸井さんの大ファンです。
この文章を読んだときは、ほんとにびっくりした。「これだ、言いたいことは」って思って、早く人に知らせたかった。
TypeTalks では、打ち合わせとかなかったんですが、ステージに本を持って行って、この文章を祖父江さんに読んでいただきました。祖父江さんは、「じゃ、糸井さんになって読みまーす」と言って朗読してくれました。よかったよー。
新潟の話し会のあとの懇親会では、この「まずは、ボールだ」はみんなの合い言葉になりました。
糸井さん、ぴったりの文章をありがとうございます!