これは、Zapf 展の図録に付いてくる図版解説です。制作年みたいに、おきまりの情報だけでなく、ヘルマン・ツァップさんのコメントとか、字の形の解説などが要所要所に入ってきます。
これとは別に、展覧会の会場入り口でもらえる作品解説もすごいよー。
カリグラフィ作品の多くは、英語かドイツ語で書かれています。一部にはフランス語やラテン語も。先人達の遺した言葉の中からツァップさんご夫妻が選りすぐって、その言葉にふさわしい形を与えられたものなんだから、その文章の意味がわかるのとわからないのとでは、味わい方に大きな差が出てきてしまいます。
でもご心配なく。J-LAF さんの協力により、作品の文章のほとんどには、ちゃーんと日本語訳がついてます! 長いのになると2600字以上。これで外国語に明るくなくても安心…いや、逆に別の心配が。それを読んでいて思ったんだけど、これって会場で涙を流してしまう人がたくさんいるんじゃないか?
短くても、良い言葉がありますよ。これなんかどうでしょう。
世界的なチェロ演奏家、パブロ・カザルスの言葉です。
今、私は93歳を越えています。
ですから、決して若くはありません。
少なくとも、90歳の時より若くはありません。
けれども、年齢は相対的なものであります。
活動を続けて、私達のまわりの世界の美しさを受け入れ続ければ、
年というのは、必ずしも老いるという意味ではないことに気がつきます。
昔より今の方が、物事に対しての感受性はずっと強くなりました。
そして人生はますます魅力を増しています。
いまグドルンさん93歳、ヘルマン・ツァップさんはもうじき93歳になられます。
作品解説には、J-LAF さんがツァップさんからじかに聞き取ってきた、ペンの動かしかたの解説も要所要所についている。
私からは、活字の制作過程で書かれた走り書きのメモの解説や、字形修整についての指示の読み解き方の解説。「えっ? 制作開始から4年経ってるのに、この字をボツにしちゃうの?」というギリギリの決断のあった部分も解説しています。
それもこれも、「なんかキレイだねー」で終わらないぞ!という意気込みがあるからです。
文章も味わっていただきたい、ペンの力の入れ具合まで想像していただきたい、活字制作の現場の緊張感まで感じ取っていただきたい、という、まさにてんこ盛りの解説になっています。