9月の「Zapf 展」準備も整ってきました。図録解説とかほんとうに手が込んでいて、カリグラフィと活字制作の展示物の細かな解説付きです。日本でこれだけの解説って無いんじゃないか?というのは手前味噌かも知れませんが、本当にそう思う。
校正とかしていると読み込んじゃって、ふーんとか感心していてばかりで、全然はかどらないんですよね。
ところで、これは、ちょっと前にインターネットで見つけて即買いした本です。
ヘルマン・ツァップさんのいちばん最初に世に出された活字書体 Gilgengart (ギルゲンガート)で組まれた本。アンデルセンの『裸の王様』です。
たまたま見つけた一冊を買ってツァップさんにお見せしたら、意外なことにご自分ではこの本を持ってらっしゃらなかったので、その場で差し上げようとしたんですが「500部くらいしか刷っていなくて貴重なんだからアキラが持っていろ」と受け取ってもらえず、別の本屋からもう一冊出ていて、それを買って最初のはツァップさんに差し上げました。一冊でも手に入るとは思わなかったので、二冊目が見つかってびっくり。
この活字の完成が1938年ですよ。73年前。しかもそのときツァップさんは二〇歳。この落ち着き、この成熟感、このリズムのとらえ方。
才能というものはそういうものなのか。すごい人と一緒に仕事をしているんだなー、とあらためて感じます。