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紙博物館で見つけた書体カード
遅ればせながら、7月11日の銀座アップルストアさんでのセミナーの報告です。150人から170人くらいの方が聴きにいらしたということです。

セミナー開始の時点で、すでに立ち見の人が通路にたくさん。途中からは通路と会場後ろの立ち見の方が二重に三重になって、エレベーター前まで人があふれてきたので、話を中断して座席の前の空間にも移動していただき、10人以上の方が横一列に体育座りで間近のスクリーンを見上げるという状態で聴いていただきました。

いらしてくださった皆さん、ありがとうございます。そして座席に座れなかった方、きゅうくつな思いをさせてしまってごめんなさい。

そのセミナーの中で、書体の効果的な使い方といっしょに、日本でささやかれている都市伝説「ヘルベチカはスイスを感じさせる書体」とか、「どこそこの国ではあの書体は使えない」ってのもぜんぜん違いますからね、ということも実例をたくさん挙げてお話ししました。

このブログの最初の、2009年3月にも似たようなテーマで書いてますが、ときどき確認する必要があるみたいですね。「外国で通用しない欧文の常識」って変だろうと。それは「都市伝説」って言うだろうと。

さて、バーゼルの 紙博物館 で買った活版印刷のカード類。売り場にあった4種類全部買ってきました。左から、ルドルフ・コッホ作の Koch-Fraktur、おなじみ Helvetica、Bodoni、そして Futura です。
紙博物館で見つけた書体カード_e0175918_15452315.jpg


裏には、書体の解説が書いてあります。別に注意書きなんかない。他の書体についても、「どこそこの国では使えない」なんてことはないわけで。
紙博物館で見つけた書体カード_e0175918_16425548.jpg

by type_director | 2010-07-31 09:35 | 書体が特定の国の雰囲気? | Comments(5)
Commented by Shoko A at 2010-08-04 05:59
「どこそこの国では使えない」なんてことはないですよね。FuturaやBodoniなんて特にどこの国でもいっぱい見かけます。ただGill Sansだけはどうしてもすっごいイギリスっぽいって思うんですけど、どうでしょう?やっぱりペンギンのせいでしょうかね? イギリスのデザイナーもそこを意識して、イギリス的な内容のプロジェクトのときにここぞと使ってますよ。
Commented by type_director at 2010-08-06 15:04
Shoko A さんはもうご存じだからこんな説明しなくてもいいと思いますが、ちょっと補足させてください。
みなさん、上のコメントを読んで「イギリスなら何でも Gill Sans 使っておけば間違いない」みたいに勘違いしないでくださいね。
確かにイギリスでは Gill Sans はよく使われていますが、書籍の本文とかキャバレーの看板まで何でもっていうわけじゃないんですよ。Gill Sans を選ぶときに、「すっきりしたサンセリフ体」「読みやすい」「大文字が碑文のような堂々とした感じ」「見慣れていて親しみがある」みたいな要素が求められていて、そこでいくつかの候補から Gill Sans が選ばれる、というようなことだってあるはず。どこの国でつくられた、みたいなことは最優先の条件じゃないんです。機能や見た目で選んでいる、っていうことをお忘れ無く。イギリスの書籍の本文が Garamond だったりすることもあるし、イギリスのキャバレーが必ずしも Gill Sans じゃあない。タイポグラフィって「イギリス= Gill Sans 」みたいに簡単じゃないですよ。
Commented by Shoko A at 2010-08-07 00:02
おっしゃる通りです。説明が足りなくて誤解を招くようなコメントになってしまい、失礼しました!

もちろん「イギリス= Gill Sans」みたいに簡単ではないです。例えばDerek BirdsallとJohn MorganデサインのCommon Worship Book(教会での祈禱書)に使われているGill Sansは、イギリスらしさを意識した選択ですが、プロジェクトの初期には別の書体(Universe, Bell, News Gothic)も試した上で、識別性や、文の構造との相性、ボールド、イタリック体とレギュラー体の関係などいろいろ考慮した結果、Gill Sansが一番適していると判断した上での選択だそうです。

どこの国で作られたっていうのは、ほとんどの場合書体を選ぶ理由にならないです。見た目の印象はもちろん、キャラクターセット、スペース効率、二種類以上の書体を使わなくてはならない場合その相性など、書体を選ぶ上でもっと大切なことは沢山あります。

どの書体がいつの時代にどの国でどういう背景でもって生まれたかなんて、ヨーロッパ人のグラフィックデザイナーでもけっこうあやふやな人がいっぱいなのが現状ですよね。かえって、下手に知識がない方がいい判断ができることもあるのかもしれません。
Commented by type_director at 2010-08-07 13:53
Shoko A さん、細かいフォローを有り難うございます! やっぱりわかってましたね。

じつは日本の人からよく「学校で書体の出自が大事だと習いました」って聞くので、それは全然違うよってハッキリ言っておく必要があると思って。
このやりとりを、記事の欄に移動してみなさんにも読んでいただきたいんですが、Shoko A さんからのコメント載っけていいですか?
Commented by Shoko A at 2010-08-07 17:15
どうぞどうぞ!
『欧文書体のつくり方』
小林章著
Book & Design 刊
欧文書体の第一人者によるフォントとロゴ制作の教科書。美しく読みやすい文字をつくるための基礎知識と考え方を解説。
 
プロフィール

小林 章
欧文書体で120年の歴史を持つライノタイプ社のタイプディレクターとして 2001年よりドイツに在住。同社は 2013 年 3月よりモノタイプ社と改称。主な職務は、書体デザインの制作指揮と品質検査、新書体の企画立案など。有名な書体デザイナーであるヘルマン・ツァップ氏やアドリアン・フルティガー氏と共同で書体制作も行っている。欧米や日本での講演多数、コンテストの審査員もつとめる。
著作:『欧文書体:その背景と使い方』『欧文書体2:定番書体と演出法』『フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?』(いずれも美術出版社)『まちモジ:日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?』(グラフィック社) 『英文サインのデザイン:利用者に伝わりやすい英文表示とは?』(田代眞理氏との共著、BNN 新社) 『欧文書体のつくり方:美しいカーブと心地よい字並びのために』(Book & Design)
 
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