11月9日から11日までスイスのベルンに行って、フルティガーさんと共同作業をしていました。
フルティガーさんに見せるために
『Pen』の「世界デザイン遺産」特集号を日本で買ってきたんですが、ベルンに持っていくのを忘れてしまいました...フルティガーさんにはその話をしただけでしたが、とてもよろこんでました。次回、たぶん11月の下旬、またベルンに行きます。そして今度こそ一冊手渡そうと思います。
フルティガーさんとの共同作業の話、日本で10月31日に出版UD研究会主催の講演で話しました。日本でも欧米でも同じように、みんな「フルティガーさんは神様」みたいに手の届かないところにいらっしゃると思っているようなので、ぐっと身近に感じてもらうように作業の合間のスナップ写真をたくさん見せたんです。それが評判が良かったみたい。また、
Neue Frutiger 制作課程でのエピソード、私のミスで小文字 o の左側のアキが 61/1000 で右が 60/1000 になっていた、つまり o がほんの少し右に寄り過ぎだったのをフルティガーさんが文章組を見て「アキラ、o が真ん中になっていないぞ」と指摘したことも話しました。フルティガーさんに今回その話をしたら「まだ覚えてるよ」と言ってました。
ほんわかした、しかし品質に対しての目は厳しい、フルティガーさんの人柄を伝えることができたと思っています。
フルティガーさんとの作業は、フルティガーさんのチェックが終わってから翌日朝までが勝負です。今回は、こんなふうでした。
まず朝のうちにホテルのフロントのかたに「午後1時に戻るから、それまでに清掃を終えてもらえるようにしてください」と言っておきます。フルティガーさんのチェックが終わったら、ホテルにかんづめの覚悟で、どこかでお昼と夕食を買ってホテルに戻ります。食べながら作業です。午後6時ころ大文字・小文字・数字の修整が全部終わり、それから大文字・小文字にアクセントをつけた字種の作成。それが10時半ころ終わって寝ます。念のために目覚ましはかけますが、翌日の朝、目覚ましが鳴る前、5時前に目がひとりでに覚めます。目が覚めるともう二度寝ができないたちなので、シャワーを浴びて、朝食の時間まで、その日にフルティガーさんに見せるための印字見本用 PDF 作成。朝食はいつもホテルで一番です。印字見本用 PDF 作成中にも、見落としていたいろんなミスが見つかるので、結局は出発の時間ギリギリまで印字見本の作り直しをしてます。印字見本を USBメモリに保存して、ホテルを出る支度をして、9時に市電に乗り、駅ビルのなかのコピーセンターに行って USBメモリからレーザープリンタで見本を出力、そのあとバスに乗ってフルティガーさんのチェックを受けに行く。チェックが終わってベルン駅に向かい、午後1時の列車でドイツに戻る...という具合。
これは作業最終日にベルン郊外で撮ったものです。Frutiger がきょうも世界のどこかで働いています。