読者の u-turn さんから、電話番号などで数字を区切る場合に使う横棒はハイフンなのか半角ダーシなのか、という質問をいただきました。『欧文書体 その背景と使い方』で書いたように、欧文での組版では一般的にハイフンと半角ダーシはこう使い分けられています。
●ハイフン=単語を分割するとき、あるいは2つ以上の単語がまとまってひとつになるとき
●半角ダーシ=「月曜から金曜まで」を表すときの「から(〜)」という意味で使う、など
日本の電話番号の表記はどれが「正しい」のか私も分かりませんが、まず、イギリス、フランス、ドイツ各国の例を見てみましょう。個人の名刺ではなく、うちの中にある広告やパンフレット類から拾いましたが、とうぜん同じような傾向で名刺も組まれているはずです。
イギリス。上から地下鉄マップ、大学職員の求人案内、デザイン雑誌『Creative Review』の広告欄の連絡先。ハイフンもダーシも使わずにスペースで分けています。数字は4つでひとかたまりになるように区切っています。
フランス。チョコレート博物館の案内、古城のパンフレット、フランス国鉄 SNCF の TGV 特急のパンフレットから。フランスも、ハイフンもダーシも使わずにスペースで分けます。数字を2つずつに区切るのが多いようです。最後の例はひとかたまりのようだけれど、ビミョーに2つずつで開けてある。
ドイツはバラバラ。ハイフンだけじゃなくてピリオドとか出てくる。これは印刷屋さんの広告。市外局番 069 はフランクフルト。69. とピリオド付き。数字は3つで区切っている。
家具のイケアの最新のカタログから。これは0180/ ってスラッシュ付きです。数字を2つずつに区切る。
フランクフルト周辺の公共交通機関 RMV のパンフレットから。市外局番 06171 はカッコに入り、数字は2つずつで区切っている。この例ではダーシもいっしょに使われていて、ハイフンとの役割の違いが分かりやすい。
上の方にある所在地の「55–57」は「55丁目57番地」でなく、「55番から57番」の意味で、大きいビルの所在地なんかはこうなってます。建物の番号2軒ぶんということかな。ちなみに、ライノタイプ本社の所在地も「Werner-Reimers-Straße 2–4」です。「Werner-Reimers-Straße」は Werner Reimers という人の名前をいただいて、通りの名前にするときにハイフンでつないでひとつの名前としています。「Mo.–Fr.」「8.30–12.00」は、もちろん「月曜〜金曜」「8時半〜12時」という意味です。
この例では、ダーシの使い方がきちんとしています。全部ハイフンで片付けているいいかげんなパンフレットもたまにあるけど、やっぱり安っぽく見えます。ハイフンとダーシの違い、ほんのちょっとですけどね。
同じパンフレットの中に、こういうのもありました。どういう意味があって上の例と使い分けているのか分かりませんが、ここで電話番号を分けているのは明らかにハイフンです。
半角ダーシはやっぱり「から」の意味になっちゃうので、ヨーロッパでは電話番号には使わないのかな。日本の場合、数字も全角(漢字などと同じ字幅の中に収まる)のものがあって、数字のデザインって縦長ですから左右が開いちゃう。だから一概にどちらが正しいとは言えないのかも知れません。