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合字(4)
T-h 合字について、読者の o_tamon さんからの以下の質問にお答えします。
「『Th』のような普通に組むとその部分だけ字間が広がって見えてしまうのを解消する機能もあると聞いたのですが本当でしょうか?」

例は Adobe Garamond Regular です。この図の、上は合字でない Th 、下は T-h 合字です。
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OpenType 機能の「合字」を選んでおくと、f-i の組み合わせでは自動的に fi 合字になるのと同じように、T-h の組み合わせは合字になります。

これについて、実は2008年に Adobe Garamond Regular のデザイナー、ロバート・スリンバックさんにインタビューしていたんですよ。『欧文書体2』後半の記事にするためのインタビューだったんですが、インタビューの量が多かったのと内容が濃すぎたためボツにした部分です。スリンバックさんの回答のうち半分以上は削ったかな。他のインタビューも同様です。

T-h 合字について、彼は「賛否両論あった」けれども、「来たるべき時代の標準になるだろう」と言っています。たしかにアキの部分を見ればよくなったように見えますが、問題は慣れですね。今のところ、Adobe の書体以外でこの合字が入っているのは少ないと思います。

ただ、デジタル以前にもT-h 合字の試みはいくつかあって、スリンバックさんも「自分の発明ではない」とハッキリ言っています。私の知っているところで有名な書体は、ヘルマン・ツァップさんの Palatino Italic(金属活字、1948年)があります。これは当時その書体を鋳込んでいたステンペル社の見本帳で、ツァップさんからもらったものです。

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ツァップさんと私とでつくったデジタル書体 Palatino nova には、T-h 合字は入れていません。
by type_director | 2009-07-14 03:46 | Comments(4)
Commented by o_tamon at 2009-07-14 22:33 x
唐突な質問に対し丁寧な回答ありがとうございます。

なるほど欧米圏で受け入れられている一般的な合字という訳ではないのですか。
欧文に触れていない日本人としては「f-i」合字にも「T-h」合字にも同じように
違和感のようなものを感じていたのですが、「T-h」合字の方は
欧米圏の人でも同じように感じることがあると知って為になりました。

Adobe 以外の書体では基本的に入っていないという知識も覚えておきたいと思います。

Palatino での「T-h」合字はスワッシュ字形扱いなんですね。
「T-h」合字は本文で用いるよりも見出し等で使われることを想定していたのでしょうか。
Commented by ななし at 2009-07-15 12:33 x
本文組みを前提とした、普通のローマン書体では
「Th」リガチャを収容したものはもともと少ないでしょう。
が、スクリプト系の書体では「Th」リガチャは珍しいものでは
ないです。
少なくともWW2以前の書体から存在します。
現在販売されているデジタルフォント版は「文字コード」の
拘束があるため、オミットされている場合がほとんどですね。
Commented by type_director at 2009-07-15 15:00
o_tamon さん、Palatino は作者のツァップさんに言わせると、見出し書体として設計したらしいです。実際には本文で使われることも多いですが。本文用の書体で「T-h」合字は珍しいみたいです。Palatino にしても、イタリック体だけですから。
Commented by type_director at 2009-07-15 15:20
ななしさん、そのとおり、普通のローマン体では珍しいですね。第二次大戦前のスクリプト体だと、ざっと見たところ Keynote(1933年、米)Legende(1937年、独)Reporter(1938年、独)などに T-h 合字がありますね。
ツァップさんと私とでつくった Virtuosa Classic には T-h 合字を入れました。