「蒼い稲妻 」さんの、Clifford 書体についての質問(書体名のあとについている「Six」「Alt」「LF」などは何を意味しているのか?)にお答えします。図で説明するほうが簡単なので、記事として載せました。
この書体 Clifford には「Eighteen」「Nine」「Six」の3バリエーションがあって、それぞれ18ポイント以上、9ポイント前後、6ポイント前後がおすすめの使用サイズです。同じ大きさで組んだ下の図でお分かりのように書体のデザインや大きさが違っています。9ポイント前後というのは通常の書籍組版の本文サイズで、6ポイント前後は脚注に使うサイズですから、装飾的な文字でつぶれそうなディテールは単純にしてあります。もっとも、紙や印刷条件によっては、必ずしもおすすめのサイズで使わなくてもいいわけで、自由に考えてください。
「Alt」は、「Alternate(オルタネート)」の略で、つまり「異体字」です。この書体のイタリック体の一部の文字に伝統的な独特の字形を持せたため、味わう文章には向いても、現代的なものには向かない可能性があると思いました。下図の灰色の字が標準の字形、黒が「Alt」のほうに入っている、クセを抑えたオルタネート文字です。他の字は同じです。
「LF」は「Lining Figures」の略で、「高さの揃った数字」という意味です。この書体は、小説などの本文用の組版を前提としてつくったので、本文に溶け込んでじゃまにならないオールドスタイル数字を標準の数字として備えています。高さの揃った数字は表(ひょう)組みに使ったり、大文字だけの単語と並べるときに合わせたりしやすいのでそれを「LF」としてつけました。
数字の形のいろいろについては、現在発売中の『デザインの現場』6月号にさらに詳しく書きました。
ただ、いまは OpenType 書体としての販売が普通なので、PostScript 時代のバリエーション「Alt」「LF」は事実上無くなっています。例えば Clifford Nine Pro を買ったらその中にもうオルタネート文字とライニング数字が入っています。詳しくは
FontShop のサイトで、この記事を書いている時点でトップ10入り(!)の Clifford を選択して、「Product」のところにある黒い四角「info」をクリックして、出てくる解説文(英語)の下の方にある PDF サンプルも見てください。
この
typophile(書体マニア)たちの評判 の中の Will Powers さんのコメントとかも参考にしてください。
あと、私が書いた
この書体の制作についての話 (英語)もあります。