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「これ、誰がデザインしたの?」に先を越されていました! イギリスのドリンクがなんでコンビニエンスストアで買えるの? 日本って、何でも手に入るんだなー。
ところで、合字(ごうじ)って知ってます? この「ff」なんか合字です。よく見ると、ふたつの f が重なっているだけじゃないということに気づかれると思います。
合字は、二文字以上がひとつの文字記号としてデザインされているものです。本文用ローマン体では、たいていは文字どうしがどこかでつながっています。サンセリフ体(日本風に言えば角ゴシック体)では、つながっていないものもあります。
合字を使わないとこんな風になる。イヤでしょ、この fi や fl の黒いかたまり。
合字の目的は、頭と頭とがぶつかってしまう組み合わせをスマートに処理して、本文中に見苦しい黒い固まりをつくらないこと。またそれがわざとらしくなく、スッと本文に溶け込むこと。これが合字。
私の本でも書きましたが、欧文組版をする際の「プロとしての最低条件」です。特に英語圏では、これを使っていないのは素人の仕事と見られます(注)。アメリカで、あるコンテストの審査に私が呼ばれた時に審査委員長から最初に言われたのがそれです。ああ厳しいんだなって感心した。
書体デザイナーにとっては、デザイン的に魅力的な形なので、たいていの書体デザイナーは力を入れてつくってる気がします。私がそうだから。腕の見せ所!って思っちゃうし、本を読むときは内容よりそっちに目がいく。ちなみに、この本は私の書体 Clifford(クリフォード)で組まれています。画面やや右の「fl」、「fi」、「ffi」が分かりますか?
「ff」、「fi」だけが合字じゃない。「gy」合字なんてのがあって、昔は金属活字書体でよく入っていたんだけど、最近あまり見なくなった。Clifford Italic には入れました。上が合字でない組み合わせ、下が合字。
だから、こんなふうに使ってくれる人がいるとうれしいんです。つくり手を喜ばせてくれる使い方。
もちろん、ビジネス用の文書とかで合字を使わないと読めないとか恥をかく、みたいなことはありません。これはプロの領域。落ち着いてじっくり読むための組版に使ってください。
「これ誰」にのっていたボトルのデザインも、合字を使いたくてそういうネーミングにしたんじゃないか?って思うくらい、合字の造形的な魅力を引き出してますね。
注:なんで「特に英語圏」? それについて、続きを書きます。