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フォントの違法コピー撲滅(笑)キャンペーン
『Mr.タイポと失われた文字』というタイトル(原題『Mr. Typo and The Lost Letters』)の小冊子ができました。たぶん非売品。
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ペーパーバックのコミックの体裁で、ライノタイプ誕生120年記念にあの「ライノタイプの笑える社史」(正しいタイトルは『A Line of Type』)を書いたヤン・ミデンドープ(作)とアレッシオ・レオナルディ(画)の名コンビ復活です。

「笑える啓蒙書」になっていて、フォントの違法コピーをやめてくださいという内容なんですが、筋書きがメチャクチャです。

【あらすじ】
22世紀にタイムスリップした Mr.タイポがたどり着いたのは、フォントの違法コピーが横行する世界。食べて行かれなくなった書体デザイナーたちがみんな仕事を辞めてしまったため、世界から文字がなくなっていく。看板や宣伝、書籍組版がままならなくなって困っている人たちを見た我らのヒーロー Mr.タイポが立ち上がった。彼は世界を救うことができるのか... Mr. Kobayashi も端役で出演。

ベルリンでのイベント用にあわせてつくった T シャツも。この他に2パターンあります。
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「ちゃんとライセンスしたフォントってセクシー」って... もう理屈とかじゃなくなってる... 理屈を並べても違法コピーがなくならないことに気づいたから笑うしかないと。

フルティガーさん、ツァップさんをはじめとする私たち書体デザインの業界は、フォントをきちんとライセンス(購入)してくれる方たちが払ってくれる料金で成り立っています。この前の記事の動画をご覧になった人はお気づきだと思いますが、フルティガーさんは豪邸に住んでいるわけじゃない。2008年に奥さんを亡くされて、いまはひとりでごく普通の老人ホームに入っている、優しいおじいさんです。部屋の大きさは日本風に言えば10畳ないかな。

別のインタビューでフルティガーさんは言っています。「書体カタログを見ると、Frutiger に別の名前をつけて『Frutiger に似た』と脇に書いてあったりするのがあるけど、とんでもない話だ。」 そうです、「Frutiger に似た」書体がいくら売れてもフルティガーさんには一銭も入りません。もちろんライノタイプにも。本当にいい書体をつくるには、ときに数年かかりますが、コピーは1秒です...

ちなみに『A Line of Type』の中身が こちら でちょこっと見られます。最後のページ、右下の人物は私です。
by type_director | 2009-06-18 19:21 | Comments(4)
Commented by つみれ at 2009-06-25 15:57 x
そのコミック・・・とても読みたいです!:D
Commented by type_director at 2009-06-30 23:40
つみれさん、日本で部数限定の配布をいま検討中です!
Commented by たいち at 2009-07-06 16:54 x
小林さま、はじめまして。
いつも楽しく興味深く拝見しております。いつも視点が面白くて勉強になります。
フルティガーさんのお話はどうしてだか和みます。神様達のおそばにおられる方のお話は本当に面白いです。当然小林さまも雲の上の方ですがw
その冊子、サンフランシスコでは手に入りませんでしょうか?Tシャツも可愛いくて、直球のメッセージがとてもマニアック!欲しい!

違法コピーは、職人達へ尊敬の想いを忘れなければ到底できることでは無いのですけどね。デジタル書体になってから、大問題も大問題、本当に大変な問題です。今や信頼で成り立っている業界と言っても過言ではないと思います。
某アジアの国から来た私の友達は、私が正規のものを購入していると言うと、「信じられない。日本人はやっぱり金持ちなんだな。」とかえってきた時はさすがに目眩がして本当に呆れ返りました。おいおい、と。リスペクトの想いをちゃんとお支払いしましょうって。
自分でお金を貯めて買った書体は、自分がデザインした訳ではなくてもすごく愛着がわきますしね。
ちなみに、次は一眼レフのレンズを買うかCliffordを買うか迷っていましたが、このコメントを期に?決定しました!
Commented by type_director at 2009-07-07 04:43
たいちさん、「信頼で成り立っている業界」、まさにその通りです。ある機械メーカーの人に、フォント業界の仕組みを話したらびっくりされたことがあります。「そんな信頼だけが頼りのビジネスモデルが成立するのか!」って。昔は活字はすり減ったし、写植は機械を買うコストが書体の何百倍でしたから、それなりに書体制作のコストは回収できた。それがデジタルになったら、やろうと思えば何万回もコピーできますからね。

7月16日から20日まで、ジョージアのアトランタで開かれるコンファレンス「TypeCon」に私が出ます! そこにたいちさんが来てくれるとか...ちょっと遠いけど...できたら差し上げられるかも。まず主催者に連絡をとってみてください。