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宝庫
いま仕事でスイスのベルンに来ています。世界的な書体デザイナーのフルティガーさんといっしょに仕事をしています。フルティガーさんは、うちの母と同い年で、もうすぐ81歳です。

ベルンでの仕事のやりかたはこんなふうです。たいてい4日間くらい滞在して、毎朝ベルンの駅からバスに乗って出かけていって、2時間くらいいっしょにデザインの調整をして、あとはホテルに戻って続きをやり、翌日の朝一番にコピーセンターで修整した文字のプリントアウトをしてまたフルティガーさんに見せる...こんなふうにしてもう一年以上かけてつくってきた新しい書体ファミリーはもう完成間近です。

ベルンの街はこんなふうです。ユネスコの世界遺産に登録されたくらいで古い町並みや昔の時計塔が残っています。
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建物の外、道路に面したところに地下室への入り口があるのが、ベルンの建物の特徴です。きょう、たまたま入った本屋さんで、「文字についての本を探しているんです」と言ったら地下室に行く入り口の扉を開けて連れて行ってくれました。
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外は半袖でちょうど良いくらいの気温ですが、急な階段を降りた地下室はひんやり冷たくて薄暗い。かすかに湿った古本のにおい。「タイポグラフィ関係の本は奥の方ですから、じっくりご覧ください」と言って行きかけたので店主に写真を撮る許可を得て、階段を上るところを撮らせてもらいました。
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一人になった地下室で探しはじめたらけっこう良い本があって、片っ端からめくってたら1時間くらいかかったと思う。4冊買いました。一番の収穫は、私の大好きなヤン・チヒョルトの本『Schatzkammer der Schreibkunst』(日本語にすると「書の芸術の宝庫」でしょうか)。やったー、これ前から探してたんだ! 私にとってはこの薄暗い地下室が宝の山でした。
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さあ、良い本を買ったらこのあとはまた仕事だ! 明日もフルティガーさんが待っています!
by type_director | 2009-05-13 19:48 | Comments(4)
Commented by la dolce vita at 2009-05-14 16:43 x
はじめまして。
素敵なブログだなー、と思い、今住んでいるシンガポールには漢文書体が溢れていることに気づいたので、漢文書体を写真で撮って回ってみました(ブログのURLを貼っています)。

書体名がわからないので、真似事になっていませんが。。。
これからも書体の紹介、楽しみにしています!
Commented by type_director at 2009-05-17 16:30
la dolce vita さん、コメント有り難うございます。ブログ拝見しました。すごい行動力ですね! シンガポールって行ったことがないので、そんなに漢字が使われているとは知りませんでした。ポップな感じの書体も面白くて、じっくり見ました。また来てください!
Commented by nao at 2009-05-17 23:36 x
はじめまして。
さりげなくはじめて拝見させていただいたブログ、なんとベルンにいらしたそうで。実は私、ベルン存住の音楽家です。このユネスコ世界遺産の旧市街に鳥の巣のような住まいをかまえています。もう8年になりますが、未だにこの旧市街は夢のような世界だなあってつくづく思います。アンティークのお店や小さなギャラリーなども小林さんの行かれた本屋さんのような地下室にあるんですよね。まるで宝箱のよう。私も時々冷気に吸い込まれるように地下への階段を下っていくことがあります。
書体デザインをされているとのこと、芸術の世界でも未知の世界です。ベルンに世界的に有名な書体デザイナーがいることも恥ずかしながら知りませんでした。。。けれど、私も例えば18世紀のヨーロッパの音楽書などを
手にするとき、アルファベットを読むのにとっても苦労することがあります。目で見る分にはとても美的なんですけれど肝心な内容を理解することが大変。。。。印刷の歴史ともあわせてとても興味深い分野です。またベルンにお越しの際はいろんな地下室、のぞいてみてください。
Commented by type_director at 2009-05-20 06:47
nao さん、コメント有り難うございます。音楽家のかたから書体デザイナーに気軽にコメントというのは、ブログのいいところですよね。そうでないとほとんど接点がありませんからね。

世界的な書体デザイナーって、たとえばどんなことなのか、それをデザイン業界でない人にどうやってお伝えすれば分かりやすいか、いまちょっと考えています。次の記事でそういうの書いてみます。