いま仕事でスイスのベルンに来ています。世界的な書体デザイナーのフルティガーさんといっしょに仕事をしています。フルティガーさんは、うちの母と同い年で、もうすぐ81歳です。
ベルンでの仕事のやりかたはこんなふうです。たいてい4日間くらい滞在して、毎朝ベルンの駅からバスに乗って出かけていって、2時間くらいいっしょにデザインの調整をして、あとはホテルに戻って続きをやり、翌日の朝一番にコピーセンターで修整した文字のプリントアウトをしてまたフルティガーさんに見せる...こんなふうにしてもう一年以上かけてつくってきた新しい書体ファミリーはもう完成間近です。
ベルンの街はこんなふうです。ユネスコの世界遺産に登録されたくらいで古い町並みや昔の時計塔が残っています。
建物の外、道路に面したところに地下室への入り口があるのが、ベルンの建物の特徴です。きょう、たまたま入った本屋さんで、「文字についての本を探しているんです」と言ったら地下室に行く入り口の扉を開けて連れて行ってくれました。
外は半袖でちょうど良いくらいの気温ですが、急な階段を降りた地下室はひんやり冷たくて薄暗い。かすかに湿った古本のにおい。「タイポグラフィ関係の本は奥の方ですから、じっくりご覧ください」と言って行きかけたので店主に写真を撮る許可を得て、階段を上るところを撮らせてもらいました。
一人になった地下室で探しはじめたらけっこう良い本があって、片っ端からめくってたら1時間くらいかかったと思う。4冊買いました。一番の収穫は、私の大好きなヤン・チヒョルトの本『Schatzkammer der Schreibkunst』(日本語にすると「書の芸術の宝庫」でしょうか)。やったー、これ前から探してたんだ! 私にとってはこの薄暗い地下室が宝の山でした。
さあ、良い本を買ったらこのあとはまた仕事だ! 明日もフルティガーさんが待っています!