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Braunfels の文字

城のある町 Braunfels に行ってきました。

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城の中はこんなふうです。

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城の外側にも昔の町並みが残っています。

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同じ通りの名前の表示板でも、サンセリフ体とブラックレターとがあります。

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この手のブラックレターの道路の名前、なかには昔風の綴りをしなくなったものもたくさんありますが、ここのはちゃんとしていた。

正しい「長い s」を使っていたりとか、ch 合字を使っていたりとかが、ちゃんとしているかどうかの分かれ目だ、とドイツに来たばかりの時に90歳の熟練の組版工のおじいさんに教わった。

お城につながる通り。「Schloßstraße」(城通り)です。

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# by type_director | 2018-06-05 03:46 | Comments(0)
合字だけじゃない、職人技(の解説編)

二つ前の記事「合字だけじゃない、職人技」について、きのう Wiesbaden の町でちょうどぴったりの例を見つけたので、その例といっしょに詳しく解説します。

Wiesbaden の町で歴史的建造物の説明会にいってきました。説明会の集合時間が朝早いので、前日から泊まりがけで。きのうの夕食後、5月の記事「Wiesbaden の文字」に出てきたベッカーブルンネンという建物をまた通りかかりました。

前回は遠くからしか見ていなかったので気づきませんでしたが、この写真右下の窓の部分をよく見ると、ガラスの部分にブラックレターで文章が書かれていました。

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ここに湧き出る温泉の説明です。

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一部分を拡大したのが下の写真。

この3行のなかで1行目の erwähnt に出てくる e は広め、2行目 Goldgasse の最後の e も同じく広めです。このガラス一枚に収めるさいに、1行目2行目の単語が短いので t や e を右に伸ばして空間を埋めようとしていますが、3行目 Brauchwasser の最後から2番目の e は狭めに書いています。そうしないとこの単語が収まりきらないからです。もちろん e だけでなく他の字も微妙に狭くして全体のバランスを取りながら書いています。いわゆる「長い s」だけは、なにせほぼ縦棒一本なので幅の変えようがありません。他の部分でカバーするわけです。

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行末のこうした調整の難しさは、一度カリグラフィをやったことがある人からわかるはず。ぴったり揃うように、あるいはデコボコにするなら行末の形が理想的なデコボコに収まるように何度か試し書きをしながら調節します。ところが金属活字の場合は、手先で調節して字の幅を変えるわけにはいきません。使えるのは出来合いの字だけ。それらを駆使して、なるべく各行末のデコボコが目立たなくなるようにします。

この金属活字 Wilhelm Klingspor Gotisch を使った嘉瑞工房の組版、3行目で狭い e を使っています。e はドイツ語でも英語でも頻出する文字なので、それを狭いものに取り替えるだけで文章一行の長さがだいぶ違ってきます。

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この活字は、特殊な文字をたくさん持っていて、たいていの大文字は幅の広いのと狭いのと2種類あり、小文字にも幅の違う字や合字があって、使い方には一定の決まりがあります。

高岡さんの組版は、そのたくさんの種類の使い方が頭に入っていて、まるで活字をペン先のように調整しながら組んでいることになります。ドイツの看板職人がガラスに書いたのと同じ事を活字でしているわけです。だから冷たくない。見ていて安心するのです。

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# by type_director | 2018-06-01 04:10 | 金属活字 | Comments(0)
目に見えない部分にも語らせる職人技
金属活字の作り手のいろんな工夫と、それをちゃんと活かして使う職人の話、3つめ。この嘉瑞工房のカード、良い意味でネタ満載なんです。
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これまではインキの乗った、黒く印刷される部分を見てきました。ここで、とうとう「印刷しない」部分の話までしちゃいます。

英国で鋳込まれた金属活字 Caslon で刷ったカード、なんとなく、普段見慣れている文章のリズムと違う気がする。なんだか、ぱらぱらしているような…。そう、嘉瑞工房のカードは、単語と疑問符との間を少し開けている。しかもこのカードだけ意図的に。
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うまいなー。これ、カスロンが活字をつくっていた18世紀によく行われた組み方です。当時(18世紀)の Caslon の活字見本を見ると、ほら。
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実際、このカードを見せてもらったとき、嘉瑞工房の高岡さんにこっそり「スペース空けたでしょ」ときいたら、それをわかってくれたか、と喜んでた。

合字をきちんと使う、まあそれは職人として普通にやるでしょう。しかし、スペースでこういう演出までするか。

カード一枚でも、わかる人と話をするのに十分なネタがつまっています。










# by type_director | 2018-05-19 02:50 | 金属活字 | Comments(2)
合字だけじゃない、職人技
こないだ引っ張り出してきた、嘉瑞工房の組版・印刷によるカードの話の続き。

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これは Wilhelm Klingspor Gotisch(ヴィルヘルム・クリングシュポール・ゴーティッシュ)で刷られたカード。ドイツ語で、合字の出てくる頻度がすごい。

金属活字で、ドイツでつくられたブラックレター書体には、かなりたくさんの種類の合字がありました。
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1行目で st 合字(s は「long s」です)が2回、ft 合字が1回、そして一行目の終わりが es の合字です。2行目も st 合字、ft 合字、 st 合字の順に出てくる。

そして3行目、細かい技を使ってます。2種類ある小文字の e のうち、1行目と2行目には幅の広い方を使い、文字の量の多い3行目には狭い e を使っています。これによって、何行かある文章の行末のデコボコを目立たなくおさえているわけです。







# by type_director | 2018-05-18 07:46 | 金属活字 | Comments(0)
フランスのエスプリを味わう

きょう、町で開かれていたフランス食品市場に行ってきました。

フランスのブルターニュ地方から出店していた焼き菓子を買って、その場で食べました。

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会場のポスターは、くだけたカリグラフィというかレタリングというか、今風な感じのフォント。
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そういえば嘉瑞工房の組版・印刷によるカードでこういうのがあったな。これを取り出して眺めていたら、フランスをしっかり味わった気分になりました。

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嘉瑞工房の印刷物には、ヨーロッパのエスプリみたいなものがある。ちょっと前に、ドイツでまだ活版印刷機を毎日稼働させている博物館を訪ねたときに、そこで働いているベテランの組版工だった人や印刷の職人さんにや嘉瑞工房の印刷物を持って行ったら、組版のレベルや品質にビックリされた。自分が褒められているようでちょっと嬉しかったものです。

嘉瑞工房の組版は、きちんと合字を使います。わかりやすいように拡大します。この2行目、Excoffon (エクスコフォン)というこの書体のデザイナーの名前に、2つの f が1本の活字に鋳込まれた ff 合字が使われています。

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2つの f がそれぞれ違う形をしていて、合字のなかでも流れるような動きを出しています。前後の o と ff の合字もうまく連続して見えるのは、この活字のデザインのうまさです。ff 合字の右下に次の文字への導入部があるので、それで ffo がうまくつながっているように見えるわけです。同じ線が、次の行の単独の f にも入っているのでよくわかります。

そして印刷は、あの葉書大の印刷物をこれだけ拡大しても凹みらしい凹みがない。いわゆる「キッス・インプレッション」で、ぐいぐい紙に押しつけすぎないんです。これが良質の活版印刷印刷の証です。

合字の使い方も印刷の具合も、何気ないようでベテランの組版工や印刷工にしっかり見られていると思うんです。そういう目の肥えた人たちに手渡して恥ずかしくない印刷物です。






# by type_director | 2018-05-12 20:27 | 金属活字 | Comments(0)