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Chemnitz で書体デザインについての展覧会
ドイツの東側、チェコとの国境に近い町 Chemnitz(ケムニッツ)に行ってきました。

偶然ですが、 Chemnitz の町の観光案内所で書体デザインについての展覧会のチラシが目に入り、観に行ってきました。地味ながら、基本を踏み外さない見事な展示でした。展覧会のサイトは こちら
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ちなみに、受付の人に、「zee.3.7.1」という展覧会のタイトルの意味は、とたずねたら、「zee = ツェー = C は Chemnitz のこと、371 は Chemnitz の電話の市外局番」だそうです。わかりにくいなー。

こすってはがすだけのレタリング、70年代から90年代始めまでは Letraset とか Mecanorma とかが有名だったと思いますが、 旧東ドイツでも Typoplex という名前のレタリングシートがあった。初めて知った。

赤いのはシルクスクリーンの原版。
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会場では Typoplex を使ってくださいコーナーがあり、私も試してみました。

しっかり圧着させようとしても、字がところどころ欠けてしまう。もともとの品質がこうなのか、古くなって劣化したからかは不明。
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ガイドラインがないので字が曲がらないか不安。スペーシングも隣の字が邪魔でなかなかわかりにくかった。

Stentor という書体のデザイナーが Chemnitz 生まれだということも、この展覧会で初めて知りました。
オリジナルのスケッチと、最終形のデザイン。
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スケッチの形をなぞるのでなく、勢いを活かしながらバランスをとっている。Qu 合字がすばらしい。

















# by type_director | 2018-07-08 01:18 | Comments(0)
Braunfels の文字

城のある町 Braunfels に行ってきました。

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城の中はこんなふうです。

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城の外側にも昔の町並みが残っています。

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同じ通りの名前の表示板でも、サンセリフ体とブラックレターとがあります。

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この手のブラックレターの道路の名前、なかには昔風の綴りをしなくなったものもたくさんありますが、ここのはちゃんとしていた。

正しい「長い s」を使っていたりとか、ch 合字を使っていたりとかが、ちゃんとしているかどうかの分かれ目だ、とドイツに来たばかりの時に90歳の熟練の組版工のおじいさんに教わった。

お城につながる通り。「Schloßstraße」(城通り)です。

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# by type_director | 2018-06-05 03:46 | Comments(0)
合字だけじゃない、職人技(の解説編)

二つ前の記事「合字だけじゃない、職人技」について、きのう Wiesbaden の町でちょうどぴったりの例を見つけたので、その例といっしょに詳しく解説します。

Wiesbaden の町で歴史的建造物の説明会にいってきました。説明会の集合時間が朝早いので、前日から泊まりがけで。きのうの夕食後、5月の記事「Wiesbaden の文字」に出てきたベッカーブルンネンという建物をまた通りかかりました。

前回は遠くからしか見ていなかったので気づきませんでしたが、この写真右下の窓の部分をよく見ると、ガラスの部分にブラックレターで文章が書かれていました。

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ここに湧き出る温泉の説明です。

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一部分を拡大したのが下の写真。

この3行のなかで1行目の erwähnt に出てくる e は広め、2行目 Goldgasse の最後の e も同じく広めです。このガラス一枚に収めるさいに、1行目2行目の単語が短いので t や e を右に伸ばして空間を埋めようとしていますが、3行目 Brauchwasser の最後から2番目の e は狭めに書いています。そうしないとこの単語が収まりきらないからです。もちろん e だけでなく他の字も微妙に狭くして全体のバランスを取りながら書いています。いわゆる「長い s」だけは、なにせほぼ縦棒一本なので幅の変えようがありません。他の部分でカバーするわけです。

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行末のこうした調整の難しさは、一度カリグラフィをやったことがある人からわかるはず。ぴったり揃うように、あるいはデコボコにするなら行末の形が理想的なデコボコに収まるように何度か試し書きをしながら調節します。ところが金属活字の場合は、手先で調節して字の幅を変えるわけにはいきません。使えるのは出来合いの字だけ。それらを駆使して、なるべく各行末のデコボコが目立たなくなるようにします。

この金属活字 Wilhelm Klingspor Gotisch を使った嘉瑞工房の組版、3行目で狭い e を使っています。e はドイツ語でも英語でも頻出する文字なので、それを狭いものに取り替えるだけで文章一行の長さがだいぶ違ってきます。

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この活字は、特殊な文字をたくさん持っていて、たいていの大文字は幅の広いのと狭いのと2種類あり、小文字にも幅の違う字や合字があって、使い方には一定の決まりがあります。

高岡さんの組版は、そのたくさんの種類の使い方が頭に入っていて、まるで活字をペン先のように調整しながら組んでいることになります。ドイツの看板職人がガラスに書いたのと同じ事を活字でしているわけです。だから冷たくない。見ていて安心するのです。

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# by type_director | 2018-06-01 04:10 | 金属活字 | Comments(0)
目に見えない部分にも語らせる職人技
金属活字の作り手のいろんな工夫と、それをちゃんと活かして使う職人の話、3つめ。この嘉瑞工房のカード、良い意味でネタ満載なんです。
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これまではインキの乗った、黒く印刷される部分を見てきました。ここで、とうとう「印刷しない」部分の話までしちゃいます。

英国で鋳込まれた金属活字 Caslon で刷ったカード、なんとなく、普段見慣れている文章のリズムと違う気がする。なんだか、ぱらぱらしているような…。そう、嘉瑞工房のカードは、単語と疑問符との間を少し開けている。しかもこのカードだけ意図的に。
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うまいなー。これ、カスロンが活字をつくっていた18世紀によく行われた組み方です。当時(18世紀)の Caslon の活字見本を見ると、ほら。
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実際、このカードを見せてもらったとき、嘉瑞工房の高岡さんにこっそり「スペース空けたでしょ」ときいたら、それをわかってくれたか、と喜んでた。

合字をきちんと使う、まあそれは職人として普通にやるでしょう。しかし、スペースでこういう演出までするか。

カード一枚でも、わかる人と話をするのに十分なネタがつまっています。










# by type_director | 2018-05-19 02:50 | 金属活字 | Comments(2)
合字だけじゃない、職人技
こないだ引っ張り出してきた、嘉瑞工房の組版・印刷によるカードの話の続き。

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これは Wilhelm Klingspor Gotisch(ヴィルヘルム・クリングシュポール・ゴーティッシュ)で刷られたカード。ドイツ語で、合字の出てくる頻度がすごい。

金属活字で、ドイツでつくられたブラックレター書体には、かなりたくさんの種類の合字がありました。
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1行目で st 合字(s は「long s」です)が2回、ft 合字が1回、そして一行目の終わりが es の合字です。2行目も st 合字、ft 合字、 st 合字の順に出てくる。

そして3行目、細かい技を使ってます。2種類ある小文字の e のうち、1行目と2行目には幅の広い方を使い、文字の量の多い3行目には狭い e を使っています。これによって、何行かある文章の行末のデコボコを目立たなくおさえているわけです。







# by type_director | 2018-05-18 07:46 | 金属活字 | Comments(0)