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Feature of the month '06.Dec

『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』ギターと歌で宿命に抗うシャム双生児の物語
Feature of the month \'06.Dec_b0071697_14294544.jpg
 個人的な話になるが、二〇〇六年は不思議な一年だった。ここ数年、ドキュメンタリーや史実を元にしたフィクションといったロックの映画をいくつか観ていたが、特に今年は春先にストーンズの来日をはさんで『ラストデイズ』、『ブライアン・ジョーンズ』、『ニューヨーク・ドール』といった作品を立て続けに観た。おまけに小誌四月号ではロック&モードがテーマのファッション特集まで手掛けた。
 ロックが嫌いなわけではないから不快だったわけではないのだが、決して知ることのないはずだった話を、突然まとめて頭に放り込まれたようで、ちょっと戸惑ったりもした。
 前置きが長くなってしまったが、そんな年の暮れに試写で観たのが、この『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』である。
——一九五六年に、トムとバリーのハウ兄弟は“総合体(シャム)双生児”としてこの世に生を受けた。二つの頭に一つの身体という容姿のせいで、彼らは隔離されて育つ。しかし父親によって興行主に売り飛ばされ、トムはギター、バリーはボーカルを、力で調教される動物のように躾けられる。
 皮肉なことに天性の才能を持っていた二人は、フリークスさながらにロック・バンドとしてデビューさせられる事となる。その名も“ザ・バンバン”。デビュー・ギグは伝説と化し、バンドはスターダムへとのしあがる。そこに登場したグルーピーのような女性記者によって、二人の身体と心には『決して離れることのできない』ゆえの葛藤が押し寄せる。やがてその行く先には暗雲が立ちこめていく——
 あたかもドキュメンタリーのように話は進む。しかし(原案となった小説こそ存在するものの)バンドの存在はフィクションで、兄弟はこれが映画初出演となった双子の役者だ。『ロスト・イン・ラ・マンチャ』を手掛けた監督コンビは、パンク誕生前夜という状況設定や関係者からの証言といったアプローチを巧みに交えることで、こちらの虚実を判断する思考を曖昧なラインへと誘い込む。
 資料によると監督たちは「スタッフにはパンク映画ではないと口酸っぱく伝えた」そうだが、とは言え本作はシャム双生児を縦軸、ロックを横軸に描いたものだ。そしてその周囲には、セックス、ドラッグ、暴力、カタルシスといったキーワードが紙屑みたいに散乱している。
 兄弟は宿命を仮想敵に、自らをパンク(の原型のような)ロックへと駆り立てられることで、運命を変えようとする。その姿と、やがておとずれる結末がアリかナシかはロックが好きかどうかで異なるかもしれない。
 再び個人的な話をすれば、この映画を観てジョニー・サンダーズが聴きたくなった。そんな映画だった。
 マンホールの底から見える空のあまりの青さをディストーションの音色で彩った、これは甘美なファンタジーである。(内田正樹)

監督:キース・フルトン&ルイス・ペペ
音楽:クライヴ・ランガー
主演:ルーク・トレッダウェイ、
ハリー・トレッダウェイほか。
★ 2007年新春東京・渋谷シネマライズにて公開
www.brothers-head.com
by switch-movie | 2006-12-19 00:05

観ておきたい映画4本 '06.Dec

『あなたになら言える秘密のこと』

観ておきたい映画4本 \'06.Dec_b0071697_14252417.jpgタイトルから察する通り、『死ぬまでにしたい10のこと』のスタッフ、キャストが再集結し制作された作品。しかし前作に比べ、よりシビアで、より寡黙な作品に仕上がっている。過去を一切語らず、人との接触を極度に避けてきたひとりの女性。一時的に視力の失った男との出会いが、彼女の心を少しずつ溶かしていくのだが、溶け出す速度のゆるさと、二人が向き合う時間の静けさが何とも優しく、胸がツンとなる。(坂本亜里)

監督:イザベル・コイシュ 出演:サラ・ポーリー ★2/10TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国公開




『マイ・シネマトグラファー』

観ておきたい映画4本 \'06.Dec_b0071697_14253497.jpgリベラルであることを信条とし、名声を欲しいままにしていた父。そんな父親の呪縛を遠ざけるように保守的であろうとし、ジャーナリストになった息子が父親のドキュメンタリーを撮る。カメラは父親の足跡を追いながらも、撮影者自身と被写体との関係を映し出していく。父と息子の和解という、多くの父と息子が果たしえないテーマをカメラのレンズ越しに行う、あまりにもパーソナルで胸打たれる作品。(青木雄介)

主演:ハスケル・ウェクスラー ★1/20より渋谷Q-AXシネマにてモーニング&レイトショー




『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』

観ておきたい映画4本 \'06.Dec_b0071697_14254142.jpgイビサ島のクラブを騒がせる天才DJフランキー・ワイルドを突然悲劇が襲う。聴覚を失ってしまったのだ。仕事も妻も離れていき一度は死を望んだが、読唇術の教師との出会いによって再生の道を歩む。取材映像や回顧映像で綴る構成になっているが騙されてはいけない。これは説明なしのニセ・ドキュメント、通称モキュメンタリーなのだ。しかし、リアリティの高さには騙されてもよいかも。(坂本亜里)

監督・脚本:マイケル・ドース 出演:ポール・ケイ★12/23より渋谷シネ・アミューズほかにて順次公開




『不都合な真実』

観ておきたい映画4本 \'06.Dec_b0071697_14255079.jpg地球温暖化がどれだけ深刻なことになっているのか、それは50年後に人類が生きていられるか否かだ。全米で話題騒然のこの映画は、アル・ゴアが地球温暖化について世界中をくまなく周り啓蒙活動を行うドキュメントで成り立っている。ゴアが半生をかけて伝えようとする情熱と、それゆえの圧倒的な説得力。私達の未来が温暖化の脅威にさらされるかどうかという今、この映画のインパクトは必至だと思う。(川口美保)

監督:デイビス・グッゲンハイム★1/23よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ他にてロードショー
by switch-movie | 2006-12-19 00:00




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