movie

<   2006年 08月 ( 2 )   > この月の画像一覧

Feature of the month '06.Aug

『マイアミ・バイス』 危険すぎる男たちの“リアル”なエンテイメント
Feature of the month \'06.Aug_b0071697_19551822.jpg
 夜中のマイアミの街を疾走するフェラーリ、カリブ海を飛魚のように跳ねるパワーボート。そして自家用ジェットと陸海空を縦横無尽に駆け抜けるスケール感や、贅を尽くしたこの映画のトレーラーだけで判断すれば、この映画は実に軽薄で凡庸なハリウッドのアクション映画に見えるかも知れない。
 八十年代に大ヒットし、社会現象ともなった同名のTVシリーズは、ドン・ジョンソン扮する捜査官ソニー・クロケットの麻薬取引による膨大な利益から連想されるラグジーライフを描いたところが大ヒットのミソだった。日本でもベルサーチのようなイタリアのアパレルブランドの人気が出始めたのがこの頃。分かりやすいコロンビアの麻薬王がいて、主人公は潜入捜査のために豪奢なライフスタイルを身にまとい、彼らの組織の中枢に近づいていく……。
 そんなある意味バブリーな『マイアミ・バイス』が約十五年ぶりに映画で復活なのだから、当時のシリーズを観ずに先入観だけでこのニュースを聞くと疑問符が頭を駆け抜けるだろう。しかしこの『マイアミ・バイス』こそ『インサイダー』や『コラテラル』といった良い意味でのメンイズム作品を創りだした監督マイケル・マンの新作として理解したいもの。
 時に何年も犯罪者の仲間として仮面をかぶり続けて、相手の信頼を勝ち得た挙句その手に手錠をかける潜入捜査官。真実を決して口に出来ない男達のストーリー。マイケル・マンの手法は真実に至ろうとするドキュメンタリー作家のような手法と情熱で、自ら作り上げたフィクション(虚構)を検討し〝あるべき姿〟を模索していく。
 必然、『マイアミ・バイス』にあっては、あらゆる言葉の意味が重くなる。危険すぎるその捜査官たちを取り巻く状況を妥協なく描くことで、照らし出されるのは友情の重さであり、プライドの重さであり、愛とセックスの重さに他ならない。楽園は地獄になり、虚無は情熱でもありえ、憎しみは愛に変わり、嘘は真実になる。フェラーリやパワーボート、自家用ジェットといった脇役たちもまた、存在そのものが虚構である彼らに操られることで、パラドキシカルに生き生きと輝きだし、〝ギア〟としての本来的な美しさや存在感を宿らせる。
 ワイヤーアクションはないし、二丁拳銃や、もちろん弾道が見えるCGの演出もない。けれども撃鉄が下りて、火薬を爆発させ、銃弾が風を切って相手に向かって飛んでいく様子や、フェラーリやパワーボートのエンジン音がその性能を音に反映させた、スピードを含んだ本物の音として鳴り響いている。
〝リアル〟をエンタテイメントにすること自体は映画の良し悪しに繋がるとは言えないが、そのストイックさこそが、映画という虚構で真実を見失わないための方法論なのだとすると『マイアミ・バイス』のロマンティックな情熱は、他のあらゆる作品を凌駕してしまいそうな熱量を含んでいるのだ。(青木雄介)

監督:マイケル・マン
出演:コリン・ファレル、ジェイミー・フォッス、
コン・リー ★9/2より日劇1ほかにて全国公開

www.miami-vice.jp
by switch-movie | 2006-08-19 00:05

観ておきたい映画4本 '06.Aug

『夢遊ハワイ』

観ておきたい映画4本 \'06.Aug_b0071697_20135661.jpg『僕の恋、彼の秘密』でみせたコミカルな演技から一変、トニー・ヤンが本作ではひとりの女性をひたむきに想うナイーブな青年を好演している。兵役を終えた青年と心を病んだ女の子の掛け合いをベースに社会的メッセージを含ませ、ゆったりとした時間の流れの中で青春という時間の儚さを表現した。そのロングショットやサイレントな浮遊感は、どこかホウ・シャオシェン作品の匂いを感じさせる一作だ。(坂本亜里)

監督:シュー・フーチュン 出演:トニー・ヤン ★9月新宿武蔵野館にて公開




『グエムル 漢江の怪物』

観ておきたい映画4本 \'06.Aug_b0071697_2021597.jpg『殺人の追憶』のヒットが記憶に新しいポン・ジュノ監督の最新作。平穏だった韓国の街中に、ある日突然怪物=グエムルが現れる。連れ去られた娘を救出する家族の物語でもあり、米社会への皮肉に溢れたエンターテイメント作品だ。緊迫したムードの中に堂々と笑いのエッセンスを吹き込んでくるあたりは、ポン監督こそが“怪物”なのではないかと思うほど。(坂本亜里)

監督:ポン・ジュノ 出演:ソン・ガンホ ★9/2有楽町スバル座ほかにて公開





『ラフ』

観ておきたい映画4本 \'06.Aug_b0071697_2023213.jpg現在の長澤まさみを支えているのはひたむきさだ。それは演技に対しては勿論、一人の大人へと向かう日々に対しても同様である。だから前作の『タッチ』もこの作品も、そういう意味では彼女の成長を捉えたドキュメンタリーのようでもある。正直観ていて気恥ずかしくなる場面も多々ある。だがその正体が、自身の過日を振り返ると生じる感情に近いことに気付くと、なおいっそうの気恥ずかしさに苛まれる。(内田正樹)

監督:大谷健太郎 出演:長澤まさみ、速水もこみち ★8/26全国東宝系にて公開






『LOFT ロフト』
観ておきたい映画4本 \'06.Aug_b0071697_2025159.jpg初めて主人公に女性(中谷美紀)を据え、サスペンス、ラブストーリー、アートなどの全方位的アプローチで3年ぶりの長編を完成させた黒沢清監督。本作は彼の“ホラー集大成”と言ってもいいだろう。また、永遠の美を求め千年前にミイラになった女性と、女優作家の“連鎖”はロマンチックでもある。後半の見どころは嵐の中のキスシーンと男性陣(西島秀俊、豊川悦司)の演技。どちらも旺盛かつ大胆で見ごたえ十分。(坂本亜里)

主演:黒沢清 出演:中谷美紀、豊川悦司★9月テアトル新宿ほかにて公開
by switch-movie | 2006-08-19 00:00




ページの上へ