42 九つの短編で一冊を

冒頭にある『バナナ・フィッシュに最適の日』という短編をまず僕は読み、これはカヴァーするのは簡単だと思った。横田基地の外、十六号線の近くにあった横田ゲスト・ホテルを舞台に、基地で働く日系のアメリカ軍人の息子が、基地で盗んだ拳銃で頭をぶち抜いて死ぬ話にすればいい、というようなことを僕は編集者に語った。ここまでは記憶しているのだが、ここから先がどうなったか、僕はなにひとつ覚えていない。多忙さのただなかで立ち消えとなったのだろう。
それから何年かあと、僕は『バナナ・フィッシュに最適の日』の翻訳を依頼され、翻訳した。なにかの本のなかで活字になったはずだ。なにかの本ではなく、九人の人が一編ずつ翻訳を受け持った、『ナイン・ストーリーズ』そのものだったかもしれない。
by yoshio-kataoka
| 2006-10-25 10:51