ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

36 ロバート・フロストのベスト詩集

b0071709_1830297.jpg 韻律は魔法みたいなものだろう。どう使うかによって、そこになにが生まれてくるかが、決定されていく。どう使うかとは、使うその人が、どのような人なのか、ということだ。詩はヴォーカルなものだと思う。黙読しても頭のなかでは言葉がリズムを作っている。
 ロバート・フロストの詩は、アメリカン・ヴォーカルの原点だ。英語による作詩の型を守りながら、彼はアメリカの言葉を韻律をとおして解放した。存分に生きて活動している体の機能としての言葉が、アメリカン・ライフの底に横たわるものを拾い上げてつなげていくと、ごく普通のなんでもないものが、すさまじく密度を高められ強化されて、過去と未来とを同時に透視する予言のようになる。
 写真にある『ロバート・フロスト詩集』は、ポケット・ブックスという出版社が出していた、カーディナルというシリーズのなかの一冊だ。僕がこれを買った日付が、扉の前のページに鉛筆で書いてある。一九五四年三月十一日。八冊の詩集のなかから選んだベストを、一冊にまとめたものだ。本文のなかには挿絵がたくさんあり、それらは微妙に淡い美しい緑色で印刷してある。部屋のなかを歩きまわりながら、このペーパーバックのなかの詩を、僕は何度も朗読したものだ。フロスト自身のリーディングをLPで聴いたときには、心の底から驚嘆した。
by yoshio-kataoka | 2006-09-15 18:38




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