ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

34 コミック・ブックの良き伝統

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『オクトーバー・カントリー』と対になるような、『秋の人々』というタイトルのペーパーバックだ。レイ・ブラッドベリーの短編が八編、「コミック・ブックの良き伝統にのっとって」、駒割りで絵と台詞そしてキャプションで展開するコミックスとなっている。一九五二年から五三年にかけて、E.C.コミックスに掲載されたものだ。本のかたちで一冊にまとまったのは、この一九六五年のバランタイン・ブックスが最初だった。ペーパーバックのページを横置きにして、その長方形のスペースに駒が収録してある。アダプテーションをした人として、アルバート・B・フェルドスタインの名があげてある。
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「私も時代の子です」というワン・センテンスで始まる前書きのような文章が面白い。「時代の子」とは、コミック・ブックスを読んで育ち、ラジオを聴いて育った、という意味だ。そのようにして育ったからこそ、いま自分はこうして作家なのだ、とブラッドベリーは言いきっている。
 彼は一九二十年にイリノイ州のウォーキーガンに生まれている。「時代の子」としてコミック・ブックスやラジオの連続ドラマに夢中になって過ごしたのは、前書きによれば一九二八年から一九三八年までの期間が中心になっている、ということだ。彼の作品が最初に活字になったのは一九四十年のことだ。
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 E.C.コミックスの怪奇サスペンスや恐怖ファンタジーなどのコミック・ブックスからは、僕も大きな影響を受けているはずだ。八、九歳から十八、九歳くらいまでの期間、夢中になって読むものといえば、E.C.コミックスだけだった。読んだものはすべて、ベッドの下に大量に保管してあった。ベッドで寝ている僕の下には、ありとあらゆる怪奇や恐怖のファンタジーやサスペンスが、積み重なっていた。
by yoshio-kataoka | 2006-09-04 16:29




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