ペーパーバックの数が増えていく TEXT+PHOTO by 片岡義男

32 写真に撮りやすいこの三冊

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 デル・ブックスの背丈がまだ十六センチだった頃のペーパーバックだ。二冊が一九五八年、そしてもう一冊は一九六十年のものだ。発表されたのはもっと以前で、一九三十年、一九四八年、一九五二年だ。三冊とも厚さは二センチ。小さな活字でびっしりと組んであるから、日本語に訳せばどれも四百字詰めの原稿用紙で千枚を軽く越えるだろう。どの作品も植民地時代からそれに続いた開拓期を背景にして、勇気と実行力のある男たちを描いている。
 読み始めたら面白さに引き込まれ、二百年、三百年前のアメリカを、文字のなかに彷徨うことになるのだろうな、とこの三冊を手にするたびに思う。一九六十年代の初めに手に入れたと思うから、すでに四十年が経過している。三冊を続けていっきに読むなら、それぞれの作品から受ける感銘が僕の内部で共鳴し共振し、三冊分をはるかに越えて大きくなるのではないか、などといまは思う。こういう段階も読書のうちだろうか。
 題名は見事に三題話だ。ロング・ライフルで新たな夜明けを迎えればそこには豊穣の地が待っている、というわけだ。どの表紙絵のなかでも、男が銃を持っているところが、この三冊をならべて写真に撮るとき、たいそう撮りやすいものにしてくれている。
by yoshio-kataoka | 2006-08-25 17:01




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