30 レナード・コーエンの隠れファンとは

レナード・コーエンのミュージック・カセットがふたつ、なぜか僕のところにある。『愛と憎しみの歌』と『ひとり−部屋に歌う』だ。ナイス・プライスと称した廉価・省略版だから、収録してある曲数はLPよりも少ない。「そのほうが楽に聴けていいですよ」と言った人がいた。あれは誰だったか。そう言うからには、レナード・コーエンをかなりのところまで、聴いていた人だったか。
ペーパーバックの山のなかに、レナード・コーエンの作品を三冊、見つけることが出来た。三冊ならべて写真に撮ってみた。まんなかにあるのは詩集で、『大地の薬味入れ』と日本語では呼ばれているようだ。新幹線で京都へ向かう途中に読んでみよう。京都に着いてから、なにが自分のなかに残るか。
二冊の小説はどちらも評判になったらしい。登場人物が配置され、彼らの物語が始まるべくして始まり、三ページ目あたりで早くも展開に引き込まれていく、というような一般的な意味での小説ではないから、読むのは大変だと僕は思う。コーエンがひとりで気持ちも体力も集中させて喋り続けるような書きかただ。次々に出て来る言葉のひとつひとつにかけた彼の執念と粘着力に、読者はまずはつきあわないことには、読み進むことが出来ない。ときどき面白いことが書いてある。
ジェニファ・ウォーンズが一九八六年に作った『よく知られた青いレインコート』というLPを、ごく最近、中古の店で手に入れた。七百円だった。コーエンの作った歌だけで構成されているLPだ。まずはこれから聴いてみようか。そしてソング・ブックも探せば自宅のどこかにあるはずだから、それで譜面を読もうか。そしてカセットを聴いて、詩集を読んで。最後に小説だ。日本にはコーエンの「隠れファン」が多い、とジェニファのLPのライナーに書いてある。コーエンの「隠れファン」とは、いったいどのような人たちなのか。
by yoshio-kataoka
| 2006-08-14 18:03